スマイル体操を続ければ嚥下機能が改善される

【歯科医】それと、ストレスは筋肉がずっと緊張している状態を引き起こしてしまい、さまざまな不調をもたらします。口も例外ではありません。顔の周りは影響を受けやすく、筋肉は使わないとどんどん減ってしまいます。日本人は特に年齢とともに表情筋を使わなくなってしまうんです。思い当たりませんか?

【患者】たしかに……。若い頃のように笑わなくなったかも……。

【歯科医】さきほど紹介した「waiwaiスマイル体操」は口の周りの筋肉をバランスよく、トータルで無理なく動かせるようになっています。

【患者】いつやるといいとかは、ありますか?

【歯科医】朝起きたら鏡の前でやってください。脳には目に入ってきたものを無意識に真似するという、ミラーリング効果があります。自分の笑顔を見ることで、トレーニングの効果が出やすいだけでなく、一日を気持ちよくスタートできますよ。

美しい歯の笑顔
写真=iStock.com/RyanKing999
※写真はイメージです

【患者】スマイルをつくることで、気持ちも表情筋もあがるんですね。

【歯科医】舌と舌の周りの筋肉を鍛えることで一番変化が出やすいのが、嚥下機能の改善です。しばらくトレーニングを続けたら、水を飲んでみてください。すごい量をいっぺんに飲み込めるようになりますよ。

ドライマウスも舌周りを鍛えれば改善される

【患者】そうなんですか⁉ どうして?

【歯科医】口の中の空間を大きく使えるようになるからと、食べ物を食道に送り込む力が強化されるからです。あごの関節は年齢とともに固くなり、口の可動域が狭くなってきます。しかし、舌の筋肉を鍛えることによって、広げることができる。

そうすると口の中の空間が広がって、水がいっぺんに口に入るわけです。スムーズに飲み込むこともできるようになるんですよ。

【患者】ということは、誤嚥の予防にも役立ちますね。

【歯科医】そうですね。食べ物を飲み込む嚥下機能には、口の中のさまざまな器官の動きが複雑にかかわっています。中でも、舌の力がとても大事。食べ物を飲み込んで食道に送り込むという動きは、舌の力がコントロールしている。

嚥下には舌によって押し出す筋力が必要なんです。ふだんから、むせることが気になる人は、舌を上あごに押し付けて力を入れる、という動作をぜひやってください。

【患者】舌のトレーニングをすると、だ液の量も増えますか?

【歯科医】もちろんです。だ液は耳の下にある耳下腺じかせん、舌の下に位置する舌下腺ぜっかせん顎下線がっかせんの3カ所から分泌される。だ液の量を増やす方法として、この3カ所を外からマッサージしてだ液の分泌を促すのが一般的です。

舌骨を動かすトレーニングをすれば、マッサージと同じような効果が期待できます。

【患者】女性は更年期になるとドライマウスになりやすいと聞きました。

【歯科医】ドライマウスは、男女とも50代以降に増えます。更年期の影響もありますが、薬を飲んでいる人もなりやすい。特に、アレルギー性鼻炎の薬は、鼻水の分泌を抑えるので、だ液の分泌も抑制されて喉がかわきます。

【患者】わたしも花粉症なので心当たりがあります。

【歯科医】実は、鼻炎の人は、舌の筋肉を鍛えて舌位置を調節すると、鼻炎そのものが治ることがあります。