利益は「会社存続の経費」である
では緊急時に資金の手当てがすぐできる会社とはどんな会社なのか?
当たり前の話だが、内部留保の厚い会社、一番は無借金の会社であり、二番は実質無借金の会社である。
常日頃から銀行融資を受けていないと、いざというときに銀行は金を貸してくれないから借りられるときに借りておくべきだ、などといっている人もいるがとんでもない話だ。
ましてやROE経営の時代とばかりに「レバレッジ(外部資本)をきかせて利益を出す経営こそ最新の経営だ」といっている人もいるが、高配当で内部留保が薄かったり、ファンドが一気に引き上げたりすれば即アウトである。上場企業と中堅・中小企業の経営は根本的に違うのである。
ましてや事業経営は明日何が起こるかわからない。だから常日頃から利益をコツコツ貯めて強い財務基盤を築いている会社が、難局を乗り切れる可能性が、そうでない会社よりはるかに高くなるのである。
一倉先生が「利益というのは会社存続経費である」と教えるゆえんである。
2019年12月「万が一なんて来ないよ!」
コンサルタントの仕事をしているためか、若手社長の方々と勉強会をする機会がある。昨年暮れのこと、年内最後の勉強会だった。「万が一のことがあったら、資金の手当てをしておくように」と、私は話した。すると参加者の社長たちは「そんなの来ないよ!」と反論。
私も「来ないとは思うけれど、マーケットから見ると、いつクラッシュが起きてもおかしくないほど、株価は高くなっている。いろいろな指標を見ても、消費税が上がった後の景気は悪い」と話し、資金を手元に置くことの話をした。
2019年12月も終わり正月を迎えても、2カ月後にまさかこうした状況になるとは、私も思わなかった。ただし「中国のシャドーバンクの脅威」も言っていたので、その備えをした若手社長たちの手元には、在庫を減らし潤沢に資金がある状態になった。備えを行った社長たちからは感謝されたが、この状態がとても大切なのである。