朝鮮半島をめぐる安全保障情勢に大きな影響が出る
日米韓、いや世界各国にとって北朝鮮の情勢が変化することは深刻な問題である。それゆえ、新聞の社説はこぞって金正恩氏の重体説をテーマに取り上げるはずだと思っていたら、全国紙のなかで書いてきたのは産経新聞だけだった。これにはがっかりさせられた。新型コロナウイルス禍ばかりが、社説のテーマではない。
4月22日付の産経社説(主張)は「金正恩氏の重体説 半島情勢の激変に備えよ」との見出しを掲げてこう指摘する。
「独裁者である金氏が死亡、または再起不能の状態になれば、北朝鮮は不安定さを増し、不測の事態が起きる可能性がある。朝鮮半島をめぐる安全保障情勢に大きな影響が出ることは間違いない」
沙鴎一歩も、安全保障情勢が大きく揺らぐと思う。さらに産経社説は指摘する。
「金氏の健康状態は不明だが、日本は警戒を怠ってはならない」
「北朝鮮国内の異変を察知した中国やロシアが国境付近に軍を展開させる動きが過去にあった。自衛隊には北朝鮮軍の動静はもとより、中露両軍も含めて監視を続けてもらいたい」
この指摘にも賛成である。中国とロシアだけでなく、世界全体の情勢を分析して日本の国益となる外交を行うべきである。
混乱を受けて北朝鮮の核・ミサイルが発射される恐れも
産経社説はこうも訴える。
「北朝鮮の体制は独裁者を守り、その意向を実現するためにのみ存在する。金委員長が死亡または再起不能になれば動揺は避けられず体制の崩壊や、軍が対外的に暴発することにも警戒が必要だ」
「権力闘争や、これに伴う内戦が起きてもおかしくない。混乱を受けて北朝鮮の核・ミサイルが国内外に向けて発射されないという保証はない。北朝鮮の核施設を押さえるため、関係国が特殊部隊を派遣する可能性もある」
軍部の暴発と内戦、混乱……。それを避けるためにはどうすべきか。できる限り早く、北朝鮮の核・ミサイルの開発を止めさせ、凍結させる以外に方法はない。産経社説は書く。
「ウイルス禍のさなかだが生活苦にあえぐ北朝鮮国民が何十万人、何百万人も難民化して韓国や中国へなだれ込む恐れさえある」
「北朝鮮という国家が存続するかどうかも含め、激変は避けられない。その近隣に位置し、自国民が拉致されたままの日本はあらゆる危機に備える必要がある」
最初に被害を受けるのは、国境を接する韓国と中国だ。特に中国は北朝鮮に一番信頼されている国である。国際社会のことを真っ先に考えた政策を取ってほしい。もうアメリカといがみ合っている場合ではない。
韓国にしても反日感情を強めているときではない。金正恩氏が倒れた際、北朝鮮という国の在り方をどうしていくのか。どうしたら国際社会にとって有意義な国に育て上げることができるのか。日米韓の連携を強め、半島の問題を解決していく必要がある。