「勉強しなさい」は×、「●日までに●ページ分宿題やりなさい」は○
春休み中、ダラダラしていた子供たちだが、形の上で新学期が始まり急に忙しそうに勉強を始めた、という家庭もあるだろう。学校の教師から、オンラインで宿題・課題の範囲が指示されるケースも多い。
つまり、「勉強をしなさい」では何をやっていいのかわからないが、「●●日までに、●●ページ分の科目をやりなさい」と具体的に指示されると、人は動くということだ。さらにソーシャルメディアを通じて、友達も宿題をしていると知れば、「他の人もやっているから」と発奮する。
これまでの「3密」などのメッセージは「勉強しなさい方式」だった。「宿題方式」に変えるのであれば、「スーパーに行くときには、原則として1家族で1人」「行列をつくるときは2メートルずつ間隔を空ける」「ジョギングは構わないが、基本は一人で、マスクをし、前後の間隔はなるべく●メートル空ける」「子供が密着しやすい砂場は閉鎖する」といった明確な指針が示されれば、グッと行動しやすくなる。
海外では、人と人との間に2メートル(もしくは6フィート)の距離を置く「ソーシャルディスタンシング」は、かなり浸透している。恐る恐る自分なりに「これは3密になるのかな、ならないのか」とびくびくしながら行動するより、よっぽどわかりやすいからだろう。
こうしたルールを小さなノートやアプリにして、配ってもいいかもしれない。チェックシートに従って、自分の行動を照らし合わせ、クリアすれば、小さな達成感や安心感も得られるだろう。
子供が小さく、どうしてもスーパーなどに連れて買い物に行くしかない人もいるだろうし、仕事で仕方なく出かけなければならない人も大勢いるわけで、「自粛ポリス化」した人が、外出する人を見て、「非国民」などと目くじらを立てる風潮は本当に悲しい。
政府や自治体の「抽象的な呼びかけ」に戸惑っている人が大多数
多くの人が、頑張って自粛をしているし、必死になってやっている。
ただ、政府や自治体の「抽象的な呼びかけ」に戸惑っている人は大勢いるはずで、十分な情報がいきわたっているとはいえない。
4月22日、政府の専門家会議は「人との接触を8割減らす、10のポイント」を発表したが、その内容は既視感がある、まだまだ解釈が個人にゆだねられる部分も多い。日本では、「3密でなければ外出OK」というようにとらえられている向きもあるが、そもそも、海外のルールは「外に出るな。以下の場合を除いて……」というように「外出しない」が原則。例えば、オーストラリアで最も人口の多いニューサウスウェールズ州などのウェブサイト(※)を見ると、細分化して「していいこと、してはいけないこと」がリスト化してある。
※What you can and can't do under the rules
ここでは書き尽くせなかったが、人の行動を変える説得の方法は他にいくらでもある。政府や自治体は「発信すればいい(後は国民にお任せ)」という考え方を脱却し、優先的に戦略的に、コミュニケーションに取り組んでいただきたい。