行動変容するかどうかは「他人の行動」を見て決める
人の行動を変えるためには3つの条件が必要だといえる。
「何をするべきかわかっている」
「なぜ、それをしなければならないかをわかっている」
「ほかの人も皆、その行動をとっている」
今の日本の状況では、最初の2つはかなり理解されている。問題は「他人の行動」だ。
アメリカを代表する社会心理学者であるロバート・チャルディーニ教授が「行動変容」に関して行った有名な実験がある。タオルの再利用を呼びかける3つのメッセージカードを置き、どれが最も協力を得られるかを調べた。
① 「環境保護にご協力ください」など一般的なメッセージが書かれたカード
② そのホテルに泊まった多くの人々が協力してくれたことを伝えるカード
③ 過去にその部屋に泊まった多くの人々が協力してくれたと伝えるカード
この3種類を示したところ、協力者が最も多かったのは③、次いで②、最後に①という結果だった。つまり、人はほかの人の行動に大きな影響を受けるということだ。
「3密」「不要不急」はキャッチーな言葉だが、意味が曖昧
翻って現状を見れば、商店街にも海岸にも、「ほかにも人がいる」。これでは行動は変わらない。また、この人たちを責めても仕方ない。なぜなら、政府は密集、密室、密接の「3密を避けよ」「不要不急」というが、その意味はあいまいだからだ。3密を示す図は、ベン図を使っており、3つの丸がそろったところだけが、ダメなようにも見える。
3つがそろったところがだめなら、1つか2つだけならいいのか。海は密ではないし、生活必需品の買い物は許されているわけで、誰かと話をしなければ商店街に出向くのもOKではないか。車で行楽地に出かけても、外に出ない限りはほかの人との接触はなく、それぐらいなら許されるのではないか——。そう考える人が相当いるわけだ。
このように、「3密」や「不要不急」という言葉はキャッチーではあるが、具体的な行動指針としてはあいまいで、こうした抽象的な言葉を繰り返しても大きな効果を発揮するとは思えない。
そこで、筆者は「宿題方式」を提案したい。