誰しも自分の心の中で育てている個性的な能力や長所が必ず存在する。それらを世に問うかの如く発揮するチャンスは、働くプロセスを通して、誰にでも平等に与えられるべきである。自分の体力や集中力がどれくらいかを知る経験、不安や緊張を乗り越える経験。そんな経験という宝物を積み重ねてこそ、人生の選択の可能性を広げる事に繋がるのではないだろうか?
六田は、2008年に同じくほのぼの屋で働いていた女性と結婚した。中学校1年の長男、小学校6年の次男、小学校2年の長女と、3人の子どもの父親だ。家族も、父の働く姿を見によく店にやってくるという。
「子どもの好きな教科がね、僕や嫁さんと正反対なんですよ。歴史大好きで、お年玉をあげたら、次男は織田信長、長男は戦国武将の分厚い本を買ってましたから。子どもに勉強の事を聞かれてもすっかり忘れてるし……困ったもんです」
と、照れくさそうにしながらも親バカ自慢を忘れない彼は、一家を支える大黒柱として、給料についてこう明かしてくれた。
嫁さんに「小遣い使いすぎ!」と怒られることも
「お給料は、今は一日5時間ほどしか働けていないので、月に13万円くらいです。プラス障害年金などが加算されて月に20万円ほどかな。家計はカツカツで、嫁さんに小遣い使い過ぎ! って怒られる事もたまにありますよ」
世のサラリーマンと同じく小遣い制の辛さに悲哀を滲ませながら、同時に、同じように障害を抱えながら働く人たちの現状については、疑問を投げかけた。
「全国の作業所の半分くらいが工賃って言い方ですけど、1万円って現実は聞いていますし、自分は多い方です。金額が全てではないですけど。例えば、今の仕事で給料3万円とかやったら、ぶっちゃけ、え? って思いますよ! 仮に、仮にですよ、今よりも給料が多くもらえるとなれば、もっと頑張るかもしれないですし、半分に減らしますって言われたら、それはちょっと……と思うかもしれない。やっぱり、子どもも小さいですから」
働く人間として当たり前の主張であり、また大黒柱として当たり前の所感だろう。
ほのぼの屋をもっとよくしていきたい
作業所は、障がい者の就労を行政だけに任せても解決にはつながらないと、当事者自身や家族が瀬戸際から立ちあげた、世界に誇るべき日本独特の福祉体制だ。大切なのはそれが自立支援の理念に則っているかどうかであり、露骨な成果主義や定員拡大を求めていくべきだとは思わない。実際、一つ一つの作業所の実態はバラエティに富み、柔軟性や自由性を併せ持っている。だからこそ、これからの障がい者福祉サービスは、利用者に選ばれる事で、より成長する可能性を秘めているのではないだろうか。
六田は、現在の自分が置かれている立場をよしとしながら、給料を受け取る日々の繰り返しにより、やりがい自体が変わってきたという。