示談を拒否され会社も解雇に

その反面、罪悪感も日増しに膨らんでいった。「やめるべきだ」「やめたい」と思う。「こんな自分ではいけない」「変わりたい」とも思う。しかし、どうすればやめられるのか、どうすればそんな自分を変えられるのかわからなかった。我慢すること以外に方法を知らなかった。我慢できるときもあった。でも、どうしても我慢できないときもあった。

そして、以前のように痴漢や盗撮を繰り返すようになっていった。次第に快感は薄れ、むしろ罪悪感のほうが大きくなっていた。でもやめられなかった。何のために生きているのだろうと思った。

母はそんな自分を察したのか、「またやってないだろうね」と問い詰めることが増えていった。それに対し、嘘をつき続けるしかなかった。ほかにも嘘が増えていった。駅のホームをうろうろする時間が増えるたびに、「飲み会があった」「友達にばったり会った」などと嘘をついた。うしろめたさから母と顔を合わせるのが嫌で、家に帰る時間が遅くなり、休日は家を空けることが多くなった。そして、外では痴漢や盗撮を繰り返していた。

再逮捕されたのは、最初の再犯から半年後だった。今度は示談をもらえず、裁判になった。会社も解雇された。拘置所の生活はみじめで、もう自分の人生は終わったと思った。裁判の結果は、執行猶予だった。

弁護士の勧めで治療を受けることを決意し、今に至っている。釈放されて、もう5年が経つ。その間、再犯はない。

「ソープランド中毒」で妻子を失った50代男性

マコトさんは、50代。結婚して子どももいたが、自身の性的問題行動が原因で離婚に至り、現在は一人暮らしである。彼の問題行動は、犯罪ではなく、極度に強迫的な性行動である。具体的には、頻繁な性風俗店通いが元で、人生が破綻してしまったケースである。

夫婦生活に問題があったわけではない。妻も子どもも大切にしていたつもりだった。しかし、人づき合いが極度に苦手なうえ、仕事でも頻繁にミスをしていた。

仕事がうまくいかず、度重なる失敗で上司に叱責されたあと、マコトさんは、気晴らしのつもりでソープランドに行った。すると、そこで性的サービスを受けている間、嫌なことを忘れられ、ストレスが溶けて流れていくように感じた。さらにそれだけでなく、自分を優しく大切に扱ってもらえたことで、自尊心を取り戻すことができるようにも感じた。