「すぐ怒る人」は、なぜ我慢できないのか

一般的にストレスに晒されると短気になるといわれていますが、それより厄介なのが、怒ることで物事がうまくいってしまったという成功体験を得てしまった人たちです。こういう人は自分の価値観に縛られがちなので、ストレスに対する閾値も低く、我慢せずに怒る習慣が出来上がってしまっているのです。

このような人の場合、怒ることで自分のストレスは発散されますが、周囲からは疎まれ、最終的には、周囲から助けてもらえない、協力してもらえないなど、何かの形で自分に跳ね返ってきてしまうのではないでしょうか。

多くの場合、他人へのイライラの原因は、相手への自分の“期待”にあります。「察してくれるだろう」「わかってくれるだろう」「やってくれるだろう」と周囲に期待してしまうから、期待を裏切られるとイライラしてしまうのです。

自分は相手のことを完全に理解することはできませんし、他人も自分のことを完全にわかることはありません。人は人、それぞれ違うのです。ですから、他人に期待を持ちすぎるのを止めることも必要です。ご注意いただきたいのは、人と仲良くしない、ぶっきらぼうになれと言っているのではありません。

人はそれぞれ違うことをわかった上で、職場では常に周囲の人へ、敬意と感謝、気配りと思いやりをもって接していただければと思います。

五感を使って緊張状態を和らげる

ある日、30代の女性管理職のIさんが、人事部からの勧めで、面談にいらっしゃいました。聞いてみると、部下を持つまでの彼女は、周囲から「おだやかな人」と言われるような性格だったようですが、部下を持ってからはイライラすることが増え、我慢できずにカッとなって部下を怒ってしまうとのことでした。

話を聞いてみると、仕事が順調で余裕がある時は気にならないことも、忙しい時や、自分に余裕がない時に、チームとしての業務が回らなくなると怒ってしまうようでした。

その後、たまった怒りをコントロールするため、緊張した気持ちを和らげるすべを見つけることをお勧めしました。無理にイライラを鎮めることを考えるよりも、イライラやストレスのある緊張状態を和らげるために、意識的に五感を使う方法です。例えば、いい景色や絵画を見る(視覚)、アロマやハーブティーを嗅ぐ(嗅覚)、激辛料理やスイーツを食べる(味覚)、お気に入りの音楽にひたる(聴覚)、マッサージやペットとのハグ(触覚)など、きっと自分に合うものが誰にも見つかるはずです。

彼女は、2、3回ほど産業医面談に来られた後、ぱったりと見かけなくなりましたが、数カ月後に人事の方から聞くには、その後は会社で怒ることはほとんどなくなったとのことでした。

皆様も、何か自分に当てはまることがあったかもしれません。紹介した対処法の全てをやる必要はありません。1つでも自分ができそうな習慣があれば、気軽に取り入れてみてください。

みなさんの日々の不安やストレスが少しでも軽減し、活力あふれる職業人生を歩む一助となれば幸いです。

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