インターネット上で自然な雑談も

「一応雑談用のチャットもありますが、そこだけに限定されていません。どれだけ真剣なグループでもある程度雑談しています。普通のオフィスでも、業務中に余談を挟むことはありますよね。それとまったく同じで、リモートワークを6年もやっていると、普通のオフィスで起きるようなコミュニケーションがオンライン上で自然に行われるようになります」

従業員同士の雑談もオンラインで。もちろん従業員同士は原則直接会ったことはない

3月にリモートワーカー協会を設立した

従業員の傾向を分析すると、日本の労働環境の歪みも見えてくる。働いている約9割は女性だが、事務仕事だから女性が多いという単純な理由だけではないようだ。

「同一労働同一賃金が適応されていないのは地方で、さらに女性となると、就業条件に恵まれていない。求人は男性向けのブルーカラーの仕事が多く、女性が働こうとすると、水商売かわずかなホワイトカラーの仕事、どちらかといった状況も少なくありません。そのせいで、人気のホワイトカラーの仕事は求人倍率が高くなり、賃金は安く買いたたかれてしまっている。弊社は全国統一賃金で、仮に東京の最低賃金より多少高いくらいの金額からスタートとなっても、地域によってはそれだけで1.5倍くらいになるのです。決して意図していたわけではないですが、地方の女性に需要があるとわかりました」

中川氏は社団法人リモートワーカー協会を設立することも発表している。会社の事業を超えて、リモートワークに関する情報を発信し、政府・自治体への働きかけを行っていく。リモートワークの急激な需要に応えていくために設立を決意した。

どこに住むという権限を会社が握ること自体、おかしい

「そもそも、誰がどこに住むという権限を会社が握っていること自体が、パワーバランス的におかしい。その権利は、働く側にあるというスタンスでいます。それに、通勤というのは、言葉を選ばずいえば、日本のサラリーマンのエンターテインメントのようなもの。部室にたまって群れている部活動のようなマインドで、それが楽しくない人も全員付き合わなくてはならない状況でした。

しかし、コロナの一件で、出社しなければ業務が遂行できないことや都市に人を集中させることは、あまりにもダメージが大きいと社会全体が痛感しました。今後は会社のBCP(事業継続計画)としても国のリスクヘッジとしても、リモートワークは必然になっていくでしょう」

中川氏は、「これからの社会にリモートワークが絶対必要だと思ってやってきました。私たちがリモートワークを広げていくつもりが、コロナにその役目を取られてしまいましたね」と、リモート取材の画面越しにやりきれない表情を浮かべていた。

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