戦略的な考え方を学ぶ
このようにビジネスも麻雀も、自分が市場や牌山とだけ向き合っておけばいいわけではなく、いつも競合という第三者の動向を意識する必要があります。戦略とは「戦いに勝つためのはかりごと」です。戦略的な考え方を学ぶという点においても、麻雀というゲームから気付きを得られることは多いです。
相手の嫌がることを考えるのは、相手の立場になって想像することでもあります。想像というのは、誰にでもできる簡単なことのようですが、意外と相手の置かれた立場や相手から自分がどう見えるかを正しく想像できる人は少ないのです。そもそも想像する努力をしている人があまりいないと言ってもいいかもしれません。
麻雀では、自分の手牌進行、何を切るか、牌山に何が残っているか、などと自分の目から見えていることを考えるだけでも情報量と選択肢が非常に多く、精一杯になります。とても残り3人の相手がどのような立場に置かれているか、自分がどう見えているかを想像するところまでは頭が回りません。
さらに言えば、全体の中で、今がどういう位置付けなのかを「俯瞰」してみるだけの心の余裕がある人はかなり少ないです。
先ほどの麻雀の話の例で言えば、目の前の手牌に精一杯になっていたら、俯瞰してみればその場は自分の手牌を大きく育てるよりも軽く流すほうに価値があることを見落とします。ビジネスの世界で、時間をかけて分厚いプレゼンテーション用の資料作りに夢中になっていたけれど、実は顧客はもっと簡単なものを求めていた、みたいなことに似ていますよね。
麻雀が本当に強い人は「主観、客観、俯瞰」この3つの視点を持っています。これは仕事ができる優秀なビジネスマンも同じですよね。ビジネスマンも余裕のない人は、自分の目から見えている主観的な視点だけで精一杯になり、客観的に自分がどう見えているのか、取引相手や競争相手のことまでは頭が回りません。それに自分のベストを尽くしても、俯瞰して市場を見たときにもっと高品質、低価格なものが存在していれば戦えるわけがないのです。
また、経験が浅い人も、客観的に相手の立場に立って自分がどう見えるかを想像するのが苦手です。なんらかの近い経験がないと、相手の立場が想像しにくいからです。
大企業で働いている人はベンチャー企業の人の自由度が想像できず、ベンチャー企業で働いている人は大企業の人の行動論理が理解できません。だからビジネスの世界では、相手の立場を想像することが得意であれば、それ自体が競争力になります。