まず、社長の放漫経営。社長以外の役員はみなそれに気づいている。しかし、誰もそれを言わない(言えない)。なかには、次々に明かされる会社の実態を聞いて、今まで隠してきたことが明らかにされていく爽快感を感じながら、うれしそうな顔をしている人もいる。

第二に、過去、神風が吹いて大成功を遂げた企業が、成功体験から抜けきれず、世の中が変化しているのに自己改革を怠った結果、不振に陥るケースだ。その場合は、我々に対して「おまえら素人に何がわかる」という態度となる。彼らは、この期に及んでも自己否定をしない。頭ではわかっていても体がついていかない状況になっている。

最後に、組織全体がサラリーマン化し、自分でリスクをとる仕事の仕方をしていない。外の環境はどんどん変化し、中国などから安価な競争品が入ってきているにもかかわらず、ゆで蛙のように昔の仕事のやり方を続けていたために業績不振に陥ったケースだ。この場合、我々からの反省論は「右から左」に流れ、誰も聞く耳を持たない。

このような状況で再生のプロジェクトはスタートすることになり、こうした状況を打破するためにはちょっとしたコツが必要になる。

業績悪化の原因が明らかになればなるほど組織では「犯人探し」が行われ、「特定の誰か」がやり玉に挙げられる。しかし、さらにさかのぼって分析すれば、組織のシステム、仕組みに起因することが多い。このように、責任の所在を明らかにしつつ、その根本原因を、最終的には「組織」や「仕組み」の不具合と説明していく。「反省と将来の展望」という相反する感情を同時につくり上げる繊細さがポイントになる。

ここで、弊社で実際に手がけたある製造業の再生事例を紹介しよう。