人口の少ない地方は病院も少ない「逃げる」のは得策ではない
以上見てきたように、新型コロナウイルスの感染の広がりは、大都市の都心部を頂点とする近郊への同心円的な広がりと特定地域における偶発的に生じるクラスター感染の連鎖という両方が併存した地域構造をもっていると考えられる。
なお、感染したからといって重症化したり、死亡したりするのは、高齢者や持病のある者が中心である。従って、ここで触れている感染リスクの地域分布は、必ずしも、重症・死亡リスクの地域分布とは一致しない。
インフルエンザ死亡率が高い地域は高齢化の進んでいる地域と相関が見られるのであり、おそらく新型コロナウイルス感染症でも同じ傾向だと考えられる。都心部は高齢者がむしろ少ない地域なので重症・死亡リスクは感染リスクほどではないだろう。
日本の場合は、医師数、病床数など医療のキャパシティーの地域分布は、ほぼ人口に比例している。感染者数最多の東京ではここ数日、感染爆発した際には病床数が足りなくなり、医療崩壊必至との見通しを語る医療関係者が多い。確かにそのリスクはあるが、だからといって都心部から他地域へ逃れるというのはあまり得策とは言えないだろう。人口の少ない地方は、都心よりも医師数や病床数が少ないからだ。
むしろ、自分や自分が属する集団が感染源となり、クラスター感染の連鎖を生まないように、一人ひとりがマスクや手洗いなどの飛沫感染や接触感染の感染予防策に注意を払い仕事や生活を工夫するということが最善の対策だと思われる。