なぜ、人口78万人の福井県で感染率が高いのか

首都圏の神奈川、埼玉は、実数規模では大きいが、感染率のランキングはずっと低くなる。47都道府県中、神奈川は2.6人13位であるし、埼玉は2.2人、16位である。感染率は両県とも全国平均の2.8人より低くなっているのである。

そして、ワースト1位の福井と同様に、京都、北海道、高知では、飲み会、ライブなどを通じたクラスター感染が偶発的に発生し、それが連鎖的にある程度の広がりをもった都道府県が、むしろ上位を占めているのである。

こうした地域を「特定感染地域」とすると、感染率の高い地域は、「大都市圏の中心部」と「特定感染地域」の2種類だと要約できる。

3月の最終週から感染拡大傾向に新しい動き

こうした感染者数のランキングは、時系列的な動きの中で把握することが重要である。

図表2には、感染確定日別に累積感染者数について、上の表と同じように、実数と人口当たりの両方で推移を示した。もとになったデータは、確定日未確認の者などが省かれており、報道される感染者数よりは小さな数字であるが、感染者数の追跡には有効だと思われる。

推移を追うと3月最終週から新型コロナウイルスへの感染状況の地域分布は、やや様相を異にしはじめていることが理解できる。

北海道では、中国などからの観光客が多いことを背景に、さっぽろ雪まつりにおける会場テント内での感染拡大や北見市における住宅展示会での感染、札幌市ススキノのライブバーにおける感染などで、一時期は感染者数が全国最多である点が目立っていた。

愛知でもスポーツジムや福祉施設を介した感染でやはり感染者数が全国トップに近い位置にあった。同県蒲郡市で「コロナばらまく」と感染を知りながら飲食店を利用していた50代の男性が死亡したことも話題となった。

3月最終週から局面が変化した感染者数の増加傾向

以前は、東京や大阪の動きは、北海道や愛知と比べあまり目立たなかった。

ところが、3月最終週を境に、大都市圏の中でも東京や大阪といった中心部において指数関数的な感染拡大が目立つようになった。

特に東京の場合は首都であることもあって、感染者の急増が全国的な関心事となっている。

このほか、特定感染地域と呼ぶべきエリアも無視できない動きを示している。典型的なのは、感染率ワーストの福井だ。接待を伴う特定飲食店での会食から福井市を中心にクラスター連鎖を起こした福井は、感染者数53人と大都市圏と比べると人数規模的にはそれほど大きくないが、人口比では全国トップに躍り出ている。

京都も京都産業大の感染者集団(クラスター)が起点となり、学生らが参加したゼミなどの懇親会から連鎖的に感染が広がった。