「守秘義務があるので、DP号の船内での特殊清掃のことは……」

筆者が現地で出入りしている業者のユニフォームのロゴを確認したところ、国内の特殊清掃業者であることがわかった。複数の会社に取材をかけてみた。日本特殊清掃隊として同船の除菌作業に参画していたのは静岡県富士市の特殊清掃業「リスクベネフィット」。代表・惟村徹氏が取材に応じた。

「ダイヤモンド・プリンセス号での船内活動の具体的なことは、守秘義務があるので言えないことも多いですが、入船前には半日ほどかけて、手袋の着脱のしかたから何から何まで、防疫の教育がなされました。かなり、しっかりとした防疫体制が組まれているなという印象です。われわれは日常業務である特殊清掃を通じて、感染症に対する知見があります。しかし、もっとも必要とされているのは、ウイルスと対峙することへの心構えや覚悟、の部分かもしれません」

写真提供=ダイヤモンド・プリンセス号に出入りする特殊清掃業者

リスクベネフィット社では新型コロナウイルス感染者を出した商業施設の除染作業も、すでに2例実施した実績をもつ。今回のDP号の除染を通じ、さらに経験値を高めていく構えだ。

特殊清掃業者「新型コロナにかかったら、かかった時に考えよう」

同じく日本特殊清掃隊に加わっているレリック(愛知県東海市)の代表・神野敏幸氏もこう心境を明かした。

「CDC(米疾病予防管理センター)とWHO(世界保健機関)、厚生労働省の3者が決めた除染手順に則って、船内ではバイロックスと呼ばれる特殊な薬剤を使い、クリーナーで徹底的に洗浄します。恐怖がないといえば嘘になります。『仮に新型コロナウイルスにかかったら、かかった時に考えよう』というくらいの気構えで船に入っています」

DP号は今後も客船として運用が続けられるだけに、一刻も早い原状回復とクルーズ再開が求められている。それだけに、日本の特殊清掃業界にのしかかる期待や責任は大だ。