コントロールで時間を稼いで治療薬とワクチンの開発につなげたい

多くの人が感染しないと、新型コロナウイルスは終息しないだろう。しかし、爆発的に感染が拡大したら中国やイタリアの二の舞になる。日本の医療機関がパンクする。できる限り感染のスピードを遅らせるようにコントロールする必要がある。コントロールによって時間を稼げれば、治療薬とワクチンの開発のための時間ができる。

産経社説は「政府や都道府県は、権限を増したいがために緊急事態宣言に基づく措置をとるわけではない。国民や社会を救うための時限的な措置である。それを理解しない非現実的な批判に、首相や政府が影響を受けては、新型ウイルスとの戦いで後手に回ることになる」とも主張するが、これもおかしい。

国民や社会を救うのは、緊急事態宣言やウイルスとの戦いではない。いかに新型コロナウイルスをコントロールするかの術を見つけ出すことである。

専門家を無視し、政策だけを唐突に示す安倍政権

次に特措法が成立する前日の朝日新聞の社説(3月12日付)を読んでみよう。朝日社説はその中盤でこう訴える。

「野党は、学識者から意見を聴いたり、事前に国会承認を得たりすることを、宣言の要件にすべきだと主張した。だが与党と折衝の結果、法案は修正せず、『国会へ事前に報告する』『与野党の意見を尊重して施策の実施にあたる』などを付帯決議に盛り込むことで決着した」
「市民の権利を制限し、社会全体に閉塞感をもたらす重大な措置だ。政府は決議の趣旨を十分酌んで行動するとともに、発動の基準をあらかじめ国民に示しておく必要がある」

私たちはこの特別措置法が「市民の権利を制限し、社会全体に閉塞感をもたらす重大な措置」であることを忘れてはならない。さらに朝日社説は訴える。

「新型コロナウイルスへの対応をめぐっても、専門家の意見を聴かず、唐突にイベントの自粛や全国一斉休校を打ち出した。政府自身が直前に定めた基本方針にも書かれていない措置だった。だが首相は詳しく説明することをせず、混乱を現場に丸投げした。その後、減収となる人たちへの手当てなどに乗り出したが、深い不信が残った」

安倍政権は専門家を無視し、政策を国民の前に唐突に示す。現状でさえ独断専行なのだから、緊急事態が宣言されたら日本はどうなってしまうのか。新型コロナウイルスよりも安倍首相の独断専行のほうが恐ろしい。

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