妻や子、父親と実家暮らし→父親が他界→実家から出ろ

C家の長男は結婚して実家を出たが、次男は結婚以来、自分の妻や子とともに父親と実家暮らしをしていた。そんなある日、ゴルフプレー中に父親が倒れ、そのまま帰らぬ人となったという。

母親は7年前に他界しているため、相続人は長男と次男の2人になる。

長男「預金はほとんどない。最後に残ったのはこの土地と建物だけ。まあ2人で相続するしかないな」

次男「兄貴、2人で相続するとは、どういうこと? 俺たち家族はここに住んでいるんだよ」

長男「そんなの簡単だよ。売ればいい」

長男のあまりの言葉に、次男は絶句してしまったという。服部氏が説明する。

子供の誰かが「家を継ぐ」というのは法的には間違っている

「相続人の片方が相続財産である自宅に居住しており、相続後も住み続けたいと希望するのは、よくあるケースです。長年住み慣れた家は離れたくないものですし、親と同居していれば『親の面倒を見ている』という意識もある。

税理士の服部修氏(撮影=笹井恵理子)

しかし子供の誰かが『家を継ぐ』というのは法的には間違っています。他の相続人の同意がない限り、財産は法定相続分を目安に分割しなければいけない。つまり長男の言い分が正しいのです」

次男が実家に住み続ける場合は、「代償分割」をする必要がある。土地と自宅を次男が相続するかわりに、長男に不動産価値の半額を現金で渡すということだ。

「都心で家の相続税評価額が高いと、代償分割を成立させるには、多額の現金が必要となります。たとえば不動産価値が1億円で、相続分としての預貯金が1億円(法定相続分2分の1で次男分として5000万円)、もしくは次男に自己資金が5000万円があれば代償分割ができます。しかし、相続分と自己資金を合わせても現金は1000万円しかない、では代償分割できません。そうなれば実家を売却せざるを得ません」

また、本件のように子供の誰かが住居として使用していると、全くの平等は税務上困難だ。