サラリーマン家庭の「相続リスク」8段階チェックリスト

仮に次男が代償分割取得により実家を相続し、相続税の申告期限まで住み続けると、「小規模宅地の評価減」の税制上の特典が適用できるため、長男より相続税が低くなる。一方で、自宅を売却した際には、次男は住居として使用していたため「居住用財産の特別控除」および「居住用財産の軽課税率」の規定の適用を受けられる可能性がある。

このように相続財産は法定分ずつ分けられたとしても、税払い後に残る現金がきょうだい間で大きく異なることになる。これも相続でもめやすい原因となっている。

相続相談解決チームは著書『サラリーマン家庭の相続』のなかで、「相続リスク」を8段階で示している。リスクに大きく影響する要素は「相続する金融財産、または手元の資金で納税ができるか」「相続人の間に争いはないか」。服部氏は「実家を『売る』『売らない』できょうだいが対立して、最終的に家庭裁判所に持ち込まれるケースもある」と言う。

【相続リスク度10%】相続人1人、相続税を納付できる
【20%】財産のなかに十分な金融資産があり、遺産分割が可能、相続人は複数、争いない
【30%】相続財産が分割できない、相続税納付できる、相続人複数、争いない
【40%】相続人は1人、相続税が納付できない
【50%】相続財産が分割できない、相続税が納付できない、相続人は複数、争いない
【70%】遺産分割可能、相続税を納付できる、相続人は複数、相続に争いがある
【80%】分割できない財産、処分に合意できない、相続税を納付できる、相続人は複数、相続に争いがある
【90%】分割できない財産、処分に合意できない、相続税を納付できない、相続人は複数、相続に争いがある
※『サラリーマン家庭の相続』(あっぷる出版社)より抜粋し改変

片親が存命していたが姉妹間でトラブルが起きたD家

ほかにも問題が生じやすい例として、立場が似通った相続人が遺産分割を行うケースがある。片親が存命していたが姉妹間でトラブルが起きたD家のケースを紹介しよう。

D家の姉は海外に留学し、海外の会社に就職。妹は日本で両親と同居。そして父が亡くなった。法定相続分は母親が2分の1、姉妹がそれぞれ4分の1ずつになる。ところがここで姉妹の喧嘩が始まった。

姉「法定通りっておかしいんじゃない? あなたは実家住まいで家賃がかかっていないでしょう」

妹「冗談じゃないわ。お姉さんは自由に好きな仕事をして、私は親の面倒を看ていたのよ」

それぞれがお互いの立場で言い分を主張し、ついには姉が「あなたは私立の大学に行かせてもらったじゃない」と学費面での待遇の差をいえば、妹も「私はいつもお姉ちゃんのお古を使っていた」と幼少期のことを持ち出す始末。

このケースを振り返りながら、服部氏は「感情論ではいつまでも決着がつかない」とため息をつく。

「相続人同士の争いは相続の手続き自体を滞らせます。相続税の申告には『10カ月』という決められた期限があるのです。期限内に分割ができない場合は、家庭裁判所に調停を申し込み、一旦は現金で税金をおさめる必要があるのです」