いまだに育休が取れる男性は少数派という現状

国の中枢がこうなのですから、育児をしている父親たちの周囲にまだ古い体質が残っていても不思議ではありません。

いまだに育児休暇を取ることができる男性は、わずかです。「なぜ自分は長時間労働をするばかりで、ほとんど子どもと遊べないんだ」と書きつづったお父さんのブログを読んだことがあります。育児に参加したくても、できないのですね。嘆くのも、ごもっとも。子どもは生まれてしばらくのあいだ、ものすごいスピードで成長します。大変ではあるけれど、大切な時期を一緒に過ごしたい、力を合わせて乗り越えたい、という気持ちはお父さんにもお母さんにも等しくあるはずです。

家庭も社会も経済も、父親の視点が入ることで、もっとよくなることがあるでしょう。

家庭の中では、両親のうちのひとりが食事の支度をしているときに、もうひとりがお風呂に入れてくれたり、翌日の保育園の準備をしてくれたりしたら助かりますよね。また、子どもの身の回りは常に何かを補充する必要があります。「この子の洋服、もう80cmじゃ小さいね。週末、90cmの服を買いにいこうか」などと気づく人はひとりより、ふたりいたほうがいいですし、何ごともスムーズにいきます。家族間の会話も増えるでしょう。

本当は「イクメン」という言葉はいらない

企業にとっても、多様な働き方を認めれば、育児で辞める人の流出を防げます。病気になった人、介護が大変な人が働き続けられる環境づくりにもつながります。仕事に割ける時間が限られているとなると、誰もが効率的な働き方をせざるを得なくなり、結果として父親たちの長時間労働も減るでしょう。

森戸やすみ『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)

女性が子育てで一時的にでも無職になると、本人だけでなく社会的にも損失が大きいといわれています。女性が継続して働くことで世帯所得が向上し、税収が増え、社会保障に回す費用は減ります。

そうすれば、夫婦関係、親子関係、地域との関係ももっとよくなるはずです。

かといって、育児をする男性たちをことさら持ち上げる必要もありません。本来なら、イクメンという特別な言葉の存在がおかしいですよね。育児をする女性がイクウーメンといわれず“母”であるように、男性もただの“父”でいいのです。

まずは、知らず知らずのうちにお父さんを排除してしまう、そんな意識をちょっと変えませんか?

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