急ぐのだ! とにかく時間が限られている

「相続」では、亡くなった人のプラスの財産のみならずマイナスの財産、つまり債務(借金、連帯保証など)も引き継がれます。亡くなった人を「被相続人」、引き継ぐ人を「相続人」といい、誰が原則的な相続人になるかは民法などで規定されており、その規定された人のことを「法定相続人」といいます。

それでは、相続はどのような手順で進んでいくのでしょうか。仮にあなたが長男で、実父が亡くなったとしましょう。まずやることは、死亡診断書を医師から受け取り、市区町村の役場に死亡届を提出することです。そのときに埋火葬許可申請書も提出し許可証の交付を受けます。ここまでが最初の7日以内にやるべきことで、葬儀会社が代行するケースも多々あります。

次に、14日以内にやることです。年金事務所などで年金の受給停止の届け出などを提出し、並行して役所で健康保険・介護保険の資格喪失の届けなどを行い、世帯主の変更手続きなども済ませておきましょう。こういった手続きでは戸籍がわかる資料や運転免許証などの提示などが必要な場合が多いので、各所に出向く前に電話で提示物の確認などをしておいたほうがいいでしょう。

このような事務処理対応とは別に最初に訪れる重要チェックポイントは「遺言書」の有無であり、被相続人が遺言書を残していなかった場合は相続人全員による話し合い(遺産分割協議)で遺産を分け合うことになります。なお、遺言書探しと並行して行うべきことは戸籍謄本・除籍謄本・登記簿・通帳・保険証券などを利用した相続人・財産の調査であり、この段階で隠し子や把握していなかった借金などが見つかることはよくあります。

遺言書は絶大な効力を有しており、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。前者は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言で、検索システムが整備されているので全国の公証役場のどこでもほとんどのものが検索できます。後者の場合、保管場所の届け出は義務付けられていないので、もし見つからなければ、生前付き合いのあった弁護士や税理士に連絡をしたり、実家のタンス・倉庫や貸し金庫などを調べる必要があります。

ちなみに、公正証書遺言と違って自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所での検認が必要ですが、最近の民法改正などで制定された法務局での保管制度を利用した自筆証書遺言の場合には検認が不要ですので、今後はこの制度の利点と、費用などはかかるがより確実な公正証書遺言の利点を比較したうえで、制度を選択する人が増えるでしょう。