さて、法定相続人は、民法で範囲と順位が決められています。配偶者(上記長男の場合で実父が死亡したときは、その実父の死亡時点での妻です。)は常に相続人の1人であり、“第ゼロ順位”といった感じです。第1順位は亡くなった人(被相続人)の子(前述の実父の長男とそのきょうだいがこれにあたります。)などです。

なお、代襲相続人も含め第1順位の者が誰一人いなければ被相続人の父母などの直系尊属が第2順位の相続人となり、第2順位の者も誰もいなければ被相続人の兄弟姉妹およびその兄弟姉妹を代襲相続した子が第3順位の相続人となります。まとめると、「常に配偶者+最も順位が高い人たち」が相続人です。

父親が亡くなったときの法定相続人の範囲・優先順位

図版では、法定相続人は「母①」と「私②」と「妹・弟②」です。「私」と妹・弟が子③より先に亡くなっていた場合、優先順位は子に移ります。第1順位がいない場合は、第2順位(祖父母⑤曽祖父母⑥)に、第2順位もいない場合は第3順位(おじ・おば⑧、いとこ⑨)に移ります。

ダメ親父が愛人に「すべて相続します!」そんな場合でも……

遺言書がなく、かつ任意の話し合いでまとまらない場合、家庭裁判所に対する調停申し立てが必要となり、法定相続分を基本に特別受益(生前に発生した財産贈与)・寄与分(介護など特別な貢献分)などの修正要素を加えた手続きが進められます。そして、調停でも話がまとまらない場合「最後の審判」として家庭裁判所の審判が下されます。

さて、故人が「愛人にすべての財産を相続させる」といった遺言を残したとしても、第3順位の相続人以外の法定相続人は最低限の取り分である「遺留分」を確保できます。法定相続人が自分(子)と母(故人の配偶者)の2人だけなのであれば、遺留分は全財産の半分となりますので、各人が全財産の4分の1ずつを権利主張することになります。

民法上は「いつまでに遺産分割を終えなければならないか」につき、これといった規定はされていないのですが、実務では「故人の死後10カ月以内」が重要な期間制限となっています。というのも、相続税の申告は原則この時点までに行わなければならず、この時点までに話がまとまらないと税務上の手続きが煩雑化するだけでなく、当初「話を何とかまとめましょう」と元気のよかった相続人たちのエネルギーも失われ結局、ズルズルと次の世代まで何も決まらないことが多々あるからです。

そう考えると実際は「相続の制限時間は意外と短い」といえます。最近は相続人も高齢であることが多く、人の寿命は長くても100年超で尽き、秘密はともかく「お金は墓場に持って行けない」以上、何十年も相続問題を先送りするような行動に経済面での合理性はほとんどないといえるのではないでしょうか。

法定相続分と最低限の取り分
(構成=プレジデント編集部 写真=AFLO)
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