家族信託を使って、長女が不動産契約の代行をした
【FP】それはよかったですね。ところで、もろもろの手続きですが、お母様ご自身でできそうですか?
【本人】調子がよいときであれば大丈夫なのですが、認知症っぽい症状が出る頻度が少し増えてきたようで、心配しています。
そこで、家族信託を結ぶことを提案した。家族信託とは、自分(委託者)の財産の一部または全部を信頼のおける家族(受託者)に託して管理・処分してもらう契約のことである。
母親名義の自宅(土地・建物)と預金を娘が代わって管理できる内容の信託契約を結べばいいのでは、とアドバイスした。司法書士や公証役場への報酬が発生するが、ランニングコストがかからず、家庭裁判所に申し立てをする必要もない。
【本人】少しお金がかかりますが、家族信託を結ぶことでスムーズに手続きができるのなら、それも必要経費ですね。引っ越し費用を節約して、費用を捻出することにします。
その後、家族信託を締結し、自宅を売却。1DKの中古マンションに移り住み、母親が入所する介護施設で働いている。
「母の介護が仕事復帰のきっかけになるなんて思っていませんでした。仕事が終わって、母の部屋でお菓子を食べながら話をするのが楽しみです。ありがとうございました」
ひきこもりを卒業するきっかけは十人十色である。父親を看病するために仕事を辞めた彼女が、母親を介護するために働き始めた。この母子に幸多かれと願わずにはいられない。