骨折で入院したのを機にまだら認知症になった83歳の母
今回、ファイナンシャルプランナー(FP)である私に相談するきっかけとなったのは、母親(83歳)の骨折だった。自宅階段で足をすべらせ転倒した母は複雑骨折で全治2カ月と診断された。長女が母の行動に違和感を覚えるようになったのは、入院して半月が過ぎたあたり。会話がかみ合わなかったり、朝食を食べたことを忘れたりするようになった。頻度はそれほど多くない。普段は会話ができるし、理解もできる。だが、週に1~2回、認知症のような症状が現れる。主治医からは「初期のまだら認知症かもしれない」と言われた。
「病院でずっと寝たきりだからかもしれません。骨折した母の足は完全に治らず、退院後は車いす生活になると言われました。病院からは1カ月後には退院してほしいと言われていますが、自宅は築40年以上経っていて、廊下が狭く段差が多い。車いすで生活できる環境ではありません。業者に見積もりをとったら、基礎の補修も必要で1000万円はかかると言われました。そんなお金はないし、働いていないのでローンも組めません。自宅を売却して、中古マンションを買おうかと思っているのですが、問題ありませんか」
彼女はそう言って、家計と資産をまとめた資金計画を見せてくれた(図表1)。
自宅を売って母子で中古マンションに移る作戦は成功するか
支出の「基本生活費」の年216万円は昨年かかった食費などの合計額である。「住居費」の年59万円はこれから購入を検討している中古マンション(2LDK/2500万円)の修繕積立金、管理費、固定資産税(推定)の合計額である。
また「自宅土地」の3500万円という評価額は、近所の不動産業者に査定を頼んだ結果だという。資産としては、このほかに、600万円余りの預貯金がある。自宅(土地)を売って、中古マンションに住み替えた場合、1500万円ほどの預貯金が残る計算となる。
「手元に1500万円ぐらい残せば暮らしていけるのではないかと思ったのですが……」
彼女の資金計画に問題がないか、ライフプランシミュレーションを行うことになった。