70代の両親と同居する50代の娘は30代で精神疾患にかかって以来、働けず、障害年金を受給している。すでに1000万円の貯金があるが、これから親亡き後、自分の生活費が残されているかを不安に思う娘は、母親の浪費を疑う。娘に呼び出されたファイナンシャルプランナーは、親子間の対話を促すが——。
複数枚の一万円札が財布から出ている
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70代の親に向かって「浪費をするな」と責める50代娘の理屈

70代の女性Aさんから、同居する50代の娘に「なぜ、アンタは浪費するのか」と日々責められて困っているという相談がありました。

娘は30代のときに精神疾患と診断され、以来、障害年金を受給(年間約78万円)しています。Aさんはその障害年金をアテにすることなく、夫婦の年金(年間計約300万円)だけで家族3人の家計をまかなっており、Aさんはムダ遣いをしているつもりはありません。

ところが、娘は強い口調で「いつもスーパーやドラッグストアで買い物しすぎじゃない?」「安いセール品だからって買っちゃだめだよ。家に十分ストックある」と、毎日のように声を荒げるそうです。

Aさんはそれに押されて1円単位で節約の努力を続けてきた、と言います。しかし、筆者の前で「わたし、もう疲れてしまいました」とこぼします。これまで娘に何度も家計は赤字ではなく、浪費は一切していないと説明したものの、理解を示さず、今や顔を合わすのさえつらいということでした。

現在50代の娘は高校卒業後、正社員として就職することはなくアルバイト生活を送っていました。アルバイトはいずれも長く続きませんでしたが、両親ともにそれほど気にしなかったそうです。もともとあまり体力がなく、女の子は結婚するものと思っていたこともあって、正社員にはこだわりませんでした。そのうち娘は30代となり、気がつけばアルバイトに行かなくなっていたのです。今は週に1回程度は図書館へ行くものの、それ以外は家にこもっています。

「娘のお金には手を付けない」と親が決めた理由

Aさんには、家の中にいる娘はそれなりにフツウに見えるので、努力すれば治るのではないかという期待があります。素人考えながら、外の空気に触れさせるのは効果があると思って、自宅の庭で花や野菜を一緒に育てたり、ドライブに連れ出したりしましたが、娘の言葉はきつくなる一方です。

治ることへの期待を持ちつつも、最近は、ずっとこのままの状態が続くことへ覚悟のようなものもできたとAさんは言います。そのこともあって娘が受給している障害年金を「少しでもいいから家計に入れて」とお願いしたことは一度もありません。

障害年金は娘のものであり、自分と夫が死んだ後の生活費にできるよう貯金しておいてほしいと考えているからです。自分たち両親が健在なうちは、娘のお金には手を付けない。夫婦でそう心に決めたのです。

家族とお金については次のとおりです。