日本が大好きで来日した方を前に身構える日本人

話を箱根にもどす。個人レベルでウイルス感染を防ぐためには、ウイルスにさらされる環境に身を置かないことが大切だ。したがって予防的観点からいえば、箱根の店主による「ウイルス撒き散らす中国人は入店禁止」という対応は、人種・国籍差別と同列に断じられない部分がある。

ただ、個々の事案の対応を揶揄糾弾するのが本稿の目的ではない。本稿の狙いは、人が他人に課す「区別」がいつから許しがたい「差別」になってゆくのかを体系的に考える方法、そしていかに本人のコントロールがおよばない、どうしようもない「ステータスで人を仕分けること」が危険な発想なのか、という考え方を共有することだ。

2月15日、名古屋市在住の60代夫婦が、ハワイから帰国後に新型コロナウイルスに感染していたことがわかった。今から約80年前、日本軍はそのハワイのパールハーバーを奇襲攻撃した。それを受け、米国政府は、10万人以上の日系人を「軍事スパイ集団」と言わんばかりに強制収容所へ収監した。

その時の「日系人」の仕分け基準を、みなさんはご存知だろうか。その基準とは、「日本人の血が16分の1以上」というものだった。4世代さかのぼって1人でも日本人がいたら、たとえあなたが米国籍保持者でも、どんなに米国政府に忠誠を誓った経歴があっても、収容所に強制抑留されたのだ。ノーベル平和賞を受賞したオバマ政権下でさえ、広島・長崎の原爆投下への謝罪を拒否している米国政府であるが、この日系人抑留の仕分けと仕打ちに対しては、1988年に公式に謝罪と賠償をしている。

現代の日本社会には、日本人と中国人のハーフの子供もいれば、渡来系の血筋をもつ日本国籍者も、そして中国人・韓国人を伴侶にもつ日本人もいる。日本が大好きで来日した方に「○○人お断り」と身構える前に、「○○人」という仕分けと表現で、無意識にそして不必要に、人の権利や気持ちを蹂躙していないか。明日は我が身のグローバル社会で生きる一地球人として、考え直したい。

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