果たして、そこまでして会社に向かう意義はあるのだろうか。

働き方改革関連法が参議院本会議で可決、成立したのは18年6月のことだ。19年4月から順次施行されているため、根性論がまかり通っていた昭和の労働環境も見直されることが予想される。雨ニモマケズ、風ニモマケズに「通勤」する必要もなくなるかもしれない。

「旅をしながら仕事」実証実験に同行した

そんな状況に先立ち、日本航空(以下、JAL)は17年の夏にとてもフレキシブルで魅力的な働き方改革を自社に導入した。

「ワーク」と「バケーション」を掛け合わせた「ワーケーション」という制度である。この言葉はもともと00年代にアメリカで生まれたものであるが、日本ではあまり聞きなれない。

ワーケーションとは、休暇中に旅先で仕事をする働き方。リゾート地などで余暇を過ごす一部の時間をリモートワークにより労働時間とする。旅先にいながらも、出社扱いとなるため、働いた分の給料は支給される。

これに加え、「出張」と「レジャー」を合わせた「ブリージャー」という言葉もある。こちらは出張先で業務を終えた後、そのまま休暇に入るというシステムだ。

このほどJAL、日本マイクロソフト、JR東日本は、異業種連携による働き方改革を推進するコミュニティとなる「MINDS」(マインズ)を19年に発足。そのなかで、JALがプロジェクトリーダーとなり、ワーケーションにおける心理状態の調査をし、「時間と場所の制約から解放するためには?」をテーマに、同制度の日本社会への普及を推し進めている。

今回は、「MINDS」がハワイでの実証実験を行うということで、現地まで同行した。

MINDSのワーケーション実証実験には、大手企業の若手社員ら計9人が参加。識者を招き、働き方についてじっくりと語り合った。

実験に参加したのは、JAL、日本マイクロソフトのほか、カブドットコム証券、日鉄興和不動産、三菱地所などの若手社員ら計9人。現状の業務を時間と場所に縛られることなく、より効率的にしていきたいという向上心を持ち、自主的に参加をしている。

まず、「MINDS」は現在の日本企業における働き方について、どういった問題があると考えているのか。実験に同行したJAL人財戦略部の東原祥匡氏はこう話す。

「日本の労働人口が減っているいま、求められているのは柔軟性のある働き方です。たとえば、子育てや介護によって限られた時間しか働くことができない場合、共通するのは仕事の質を追い求めるようになること。ひとり当たりの労働生産性を向上させるということです。その点、リモートワークはとても効果的な手段です。オフィスに出社せずに働くことが認められないと、仕事を辞めざるをえないという人も増えてくるはずです。