「全便欠航」なら現預金だけで維持できるのは2カ月弱

——ANAは3月28日まで中国本土への運航本数を週165往復便から週81便に半減させると発表しました。JALも運航本数を週98便から週43便に減らします。航空会社にとって「運休」には経営面でどのようなダメージがありますか。

ダメージはとんでもなく大きいです。飛んで初めて売上が立つ、それが航空業です。飛行機が飛ばなければ、売り上げは激減で、人件費と機材費という固定費だけが出ていきます。運休の期間が長引くほど、経営へのダメージも大きくなります。

撮影=プレジデントオンライン編集部
インタビューにこたえるスカイマークの佐山展生会長

——仮にスカイマークが「全便欠航」となった場合、経営を維持できるのは何カ月ですか。

当社の2019年度の経営状況は、売上高が約900億円、営業利益が約70億円です。簡単に言えばその差額の約800億円以上のかなりの部分が人件費や機材費などの固定費です。1カ月当たりになおすと月約70億円。当社の現預金は現在約100億円ですから、それだけで維持できるのは2カ月弱、融資枠が200億円ありますが、それを入れても4カ月余りで尽きてしまいます。

もちろんその時には金融機関からの追加の借り入れを検討することになるでしょう。当社の場合、借入金がないので、もっと長期の運休にも対応できます。一方、すでに借入金が多い会社は、運休期間が想定以上に長引くと極めて厳しい経営状況になります。

倒産する航空会社が出てきてもおかしくはない

——「感染症」のようなリスクは、航空会社にとって深刻なリスクということでしょうか。

売上ゼロで追加借り入れがなくても当社の場合は4カ月強はもつわけですから、現状でリスクに備えた経営ができているといえると思います。

一方、航空会社によっては、リスクに備えたくても備えられない経営状況であることが少なくありません。たとえば、多額の借入金を抱えて、厳しい運賃競争をしながらギリギリの状態で経営している会社もあるでしょう。そのような会社に予想のつかない事態が起きれば、経営はかなり厳しい状況に追い込まれることになります。

——感染者数がもっと増えれば、航空会社の倒産も起きるのでしょうか。

国内外を問わず借入金の多い航空会社は少なくありません。あくまで一般論ですが、新型コロナウイルスの流行が長期化すれば、資金繰りに行き詰まって倒産する航空会社が出てきてもおかしくはないと思います。

しかし、リーマンショックやバブル崩壊など、社会や経済を変える大きな変化は何年か何十年かに一度は必ず起きます。企業はそれを受け止めるしかありません。備えのある会社は残り、強い会社が勝つ。それがビジネスです。