「飛び恥」は「移動をするな」という意味に等しい

——世界の移動ということでは、グレタ・トゥンベリさんの抗議活動をきっかけに、「飛び恥」という言葉がトレンドになっています。飛行機での移動は環境負荷が大きいという指摘です。イギリスのロックバンド・コールドプレイは、グレタさんに賛同して「飛行機に乗らない」という宣言までしました。航空会社のトップとしてどう受け止めていますか。

私はそうした行為に完全に同意することはできません。特に、グレタさんに続く一連の抗議活動はパフォーマンス的に見えます。

撮影=プレジデントオンライン編集部
インタビューにこたえるスカイマークの佐山展生会長

飛行機に乗らなくてもいい移動について、移動手段を見直すということなら賛成です。ですが、飛行機でなければ行けない場所はたくさんあります。飛行機が飛ばなくなったら世の中はまったく変わってしまいます。

「飛行機を飛ばすな」という主張は、「移動をするな」という意味に等しいことです。これは人類が素早い自由な移動によって、どれだけ大きなものを得てきたのかを考えると、全面的に受け入れることはできません。たとえば海外にも行くなという声も聞かれますが、海外を旅して、他国の状況を知れば、自国の状況を客観的に理解できるようになり、個人としてもまた文明それ自体にもその進歩をうながすのだろうと思います。

「まったく飛行機に乗らない」ではなく、いかにCO2を減らすかなどの技術開発やその方策を考えることのほうが大事です。航空会社としてはエンジン効率の向上をはじめ、技術革新を進めることが必要でしょう。しかし現時点で飛行機での移動を否定することは、まったく現実的ではないと思います。

ANA副社長だった人物が「新社長」となることの影響は

——スカイマークは昨年10月に再上場を申請し、今年9月までの上場を目指しています。そうした重要な時期に社長交代の発表がありました。なぜでしょうか。

今年1月、市江正彦社長から「一身上の都合により辞任したい」との申し出がありました。民事再生のプロセスが完了し、業績が順調に推移していることから申し出を受理し、1月31日に社長交代を発表しました(社長交代は2月13日付)。

——スカイマークは大手2社に対抗する「第3極」を標榜してきましたが、新社長・洞駿氏は2011年から14年までANA副社長を務めていた人物です。ANAの影響力が高まるとは考えられないのでしょうか。

当社の株主構成は、インテグラル50.1%、ANA16.5%、日本政策投資銀行とSMBCの連合が33.4%という比率で、私が代表を務めるインテグラルが筆頭株主であり、社長から辞任の申し出があった場合、その判断を責任をもってする責務があります。