いかに共通の話題を投げ掛けられるか

お客さまに心を開いてもらうための秘訣はほかにもある。

「お互いの共通点を見つけることです。いま住んでいる場所や勤務地、出身地、出身校……どんな小さなことでも構いません。何か1つ共通点を見つけたら、そこから話題を広げていくことができます。たとえば『お休みの日は何をしていますか?』から趣味や友人関係の話に発展することはよくあります」

石井さんは、明治大学のラグビー部の出身。学生時代に他大学の友人も多かったので、大学名を聞けば「キャンパスに遊びに行ったことがありますよ」とすぐ話題を広げられる。昨年はラグビーW杯が開催されたので、ラグビー経験者やラグビーファンとは話題が尽きることはなかったという。

子ども連れの相手には、まず子どもの話題だ。石井さんは独身だが、共通点がないわけではない。

「赤ちゃんなら『かわいいお嬢さんですね』と話しかけます。男の子だとしても、『あんまりかわいいから、女の子かと思いました』と話す。これも、“馬鹿になる”ですね。それからお子さんの名前を尋ねます」

初対面で「子どもの名前」を聞く理由

名前は共通点が見つけやすい。自分と同じ字があるか、同じ名前の知り合いはいないかと考えを巡らせる。まったく共通点がないときは、その名をつけた理由を尋ねる。

「みなさんいろいろ考えて名前をつけたはずですから、話すことはたくさんあります。私の名前を親がつけた由来も話します。相手のことを尋ねるだけでなく、自分のことも積極的に話します。そうやって自己開示することで、信頼関係はさらに深まります」

子どもが自分で話せるぐらいの年齢なら、本人に名前を尋ねる。石井さんは、自前のiPadに子どもが好きそうなアプリや動画を準備してあるので、子どもがそれに見入っているうちに親のほうに、現在の住まいについていろいろ質問するという。買い物中の母親なら、「近くの○○スーパーは安いですよね」と話したあと、現在の家賃を尋ねる。「月々10万円も払っていたら、スーパーで安くお買い物しても追いつきませんね」と話を展開するのだ。

「私は社内研修の講師も務めていますが、質問力をつけるには場数が大切だと教えています。ふだんから意識的に質問することで、そのスキルは向上します」

効率よくスピーディに情報を得るための質問力は、日々の意識的な反復によって身につけていくということだろう。

石井彰太郎(いしい・しょうたろう)
オープンハウス営業本部神奈川営業部長
1988年、東京都生まれ。明治大学法学部卒業。2014年にオープンハウスへ入社。明治大学ラグビー部では、現日本代表の司令塔を務めた田村優と同期。
(撮影=今村拓馬)
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