母親代わりで面倒を見てくれた伯母
私の母親の実家は札幌市郊外にあります。母親は3男3女の6人きょうだいで、私が高校生のときに亡くなりました。おじ3人はそれぞれ地元から出て、首都圏で就職、結婚。そして伯母2人は結婚せず、2人でずっと実家に在住しています。
上のR伯母はもともと体が弱く、デパートなどで働いた後、ここ20年は特に仕事をしていません。現在は87歳。下のE伯母は化粧品の営業を去年まで続けていました。しっかりしているころは所長までやって、営業成績の良さから全国表彰を受けたこともあるほどです。現在は82歳の高齢者です。
私の母が亡くなった後、母親代わりとして世話をしてくれたのがこのR伯母とE伯母です。社会人になってからも、男性用化粧品や野菜などを送ってくれていました。ありがたい話で、だからこそ、いずれ恩返しをしたい、と考えていました。
さて、E伯母は5年前から少しずつ、体が弱くなっていったのです。視野が狭くなるのを感じて、大事故を起こすよりは、と4年前には免許を返納、車も売却してしまいます。これは後期高齢者による交通死傷事故を考えれば正しい判断だった、と私は思います。
ただ、車がなくなったことで、いくら100万人都市とは言え、不便になったこともまた事実です。化粧品の営業も思うようにいかなくなり、規模は大きく縮小していきました。
入退院を繰り返す2人の伯母
さらに、E伯母は2018年あたりから体も弱り、何度か入院もしました。なお、入院を何度か繰り返したのはR伯母も同じです。そこで私はフリーランスの特権を活かして、できるだけ実家に行くようにしました。伯母たちには「取材、打ち合わせや講演などが入った」と説明します。これ、ウソではないが本当でもない、というやつで。
地元の新聞で就活連載を持っていますので取材や打ち合わせ、というのはウソではありません。講演も同様です。が、講演料や交通費まで発生するものはほぼありません。そりゃあそうでしょう。記事を書く以上、被取材者から交通費を受け取るわけにはいきません。仕事相手も同様で顔合わせや情報交換程度で交通費が発生しないのは、どの業界でも常識です。
2017年ごろからほぼ月1回ペースで実家に寄りましたが、交通費まで発生したのは数回あったかどうか。あとは完全な持ち出しです。そうまでして、実家に戻るようにしたのはやはり伯母の様子が心配だったからです。と言って、単に「実家が心配だから戻った」では伯母たちに気を遣わせてしまいます。
そこで「仕事の都合」という名目にしておいて、実家の雪かきや買い物、手続きの代行などは、あくまでも「仕事のついで」というスタンスにしておきました。今思えば、このあたりの戦略からして、まずかった気がしないでもありません。が、当時は戦略がどうこう、と考えられないほど、伯母2人の状況は深刻でした。