一方、部下の側も直属の上司は、問題が起こった場合、権限と責任を問われるわけですから、上司にきっちりと相談すべきかどうか、広く物事を考えて自分の実力がどの程度のものなのか、自己認識が正しくできているかが問題です。

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その自己認識が足りないと、自分の上司を飛ばして、トーンと上に持っていってしまい、結論を急ぎすぎることになる。

だから、もし上司である自分を飛ばして問題が起こった場合「君、ダメだよ。肝心な問題かどうかを見極める感度が悪い」と叱るのではなく、取り組むべきテーゼを与えました。情報というのは、その集団の共有財産であり、退蔵してはいけない。組織に影響することですから、もっと感度を磨いて、勉強しないと、ということをよく言いましたね。

その情報感度が悪い部下にすぐバッテンを付けるようなことはしません。しかし3回、4回同じように重要なことが、相談なしに上にいったときには、これは代わってもらったことはあります。

ただ、この問題に関しては上司にも責任がある。非常に重要な問題を聞いていなかったということは、逆に言えば上司が自分の部下の仕事を把握できていないことになるからです。課長時代、私は部下によく言ったものです。「もっと大きな声でお客さんと電話をしろ」と。「そしたら君の報告を受けなくても、何の問題が起こっているかわかる」とね。

その頃から、私が座右の銘として持っていたのが当時の上司からもらった「指導者としての価値」10カ条です(図参照)。俺は聞いてないと怒る前に、自身が組織のリーダーとしての価値を持っているか。これらの点を自戒してみることも必要だと思います。

(桐山秀樹=構成 浮田照雄=撮影)