「最小限の製品」を作って、改良を重ねる
アントレプレナーであり、『リーン・スタートアップ』の著者エリック・リースは、MVP(Minimum viable product/実用最小限の製品)という考え方を提唱している。
ターゲットの顧客を決め、新規事業のアイデアを作ったら、そのアイデアを元に、お金をかけずに短期間でシンプルな製品を作り、顧客に受け入れられるか検証する。これがMVPだ。MVPを想定顧客に見せて反応を観察し、よりよい反応を引き出せるようにMVPを何回も何回も改良し続ける。反応が悪ければ、MVPそのものを大きくゴッソリと作り替えてしまう。このようにMVPは、企画で考えたアイデア=仮説を、実際に触れるように実体化したものだ。
私も著書の企画を思いついたら、最初にタイトルと表紙イメージを作ることが多い。本が書店に並ぶイメージを具体的に作り、チーム仲間の編集者と共有する。そして大まかなプロットを作り、より詳細に作り込み、そのたびに編集者や想定読者の意見を聞きながら修正したり、場合によってはそれまで作ったものを全て捨てて、ゴッソリと書き直す。こうしたプロセスを経て本を仕上げていく。
最初に企画の完成イメージを作れば、チームでゴールを共有できるだけでなく、実際にその企画が成功するかどうかも把握できる。そして企画の成功確率が上がるのである。
愚直な仮説検証は、凡人が天才に対抗できる武器
このように企画は、仮説検証を通した「学び」により育てていく。仮説検証とは、試行錯誤による失敗を通じ、確実に学びを深める仕組みだ。「失敗からの学び」が差別化の武器なのだ。
一方で「失敗したくない……」と思う人も多い。
誰でも失敗するのは、嫌なものだ。失敗を避けるのは、実に簡単である。
何もしなければ、絶対、失敗しない。
しかし企画とは、新しいことをして、何かを変えることである。新しいことには失敗が付きものだ。では、どうするか? 実は、簡単なことである。
「数を沢山やることだ」
沢山やれば、どれかは当たる。
沢山の苗を植えて、育ちが悪い苗を間引いていくのと同じだ。
春の田んぼには、小さな苗が沢山植えられている。
苗を一本一本じっくり見ても、育つかどうかなんてわからない。
しかし肥料と水をやりながら育ちが悪い苗を間引いているうちに、毎日育ち続け、秋になると稲穂が稔り、大きな収穫を迎える。
これと同じだ。仮説検証の学びを蓄積し続けることで、あなただけの武器がゆっくりと育っていく。そして気がつくとそれは強大な武器になっている。
「継続こそ、力なり」という言葉は言い古されている。この言葉をバカにする人は、常に近道を探す。結果、時間が経っても力が付かない。
世の中の99.99%の人は凡人だ。しかし愚直な仮説検証の積み重ねにより、凡人でも天才に対抗できる。愚直な仮説検証は、凡人が天才に対抗する唯一の武器なのである。