シトロエンやルノーも用いた国産車初の「FF方式」
先進技術のひとつとして採用したのがFFでありフロントエンジン、フロントドライブという方式だった。いずれも次のような機構である。
「駆動方式は、当時の国産車としては画期的なフロント・エンジン/フロント・ドライブのFF方式を採用していました。それまで、純粋な国産車で、FF方式を採用した乗用車は一台もなく、海外でもシトロエンやルノー、サーブなどの限られたメーカーのみが生産していました」(『スバコミ』ファンサイト)
また、後継車にも採用されている水平対向エンジンはこうなっている。
「水平対向エンジンの特徴は、小型軽量であることと、スロットル・レスポンスの良さにあります。言い換えれば、極めてスポーティな特性を持っていると言えます。また、シリンダーの中を往復するピストンの動きが左右対称となるために、動的なバランスが取りやすく、従って振動が少なくなる利点があります。振動を抑えることは、乗り心地が良くなるばかりではなく、エンジンの耐久性も向上することになります」(同サイト)
次いで、レースカーにも採用されたインボードブレーキ、そして、先進的なデュアルラジエーターシステムについても同サイトは丁寧に説明している。
もっとも驚いたのは車内の広さ
「センターピボット・ステアリング方式の採用によって、タイヤの接地面の抵抗を最小限に止め、操舵反力が軽減された。同時にハンドルの操舵角度も大きくとることができた。
バネ下重量が軽減されて、タイヤの接地性がよくなり、加速、乗り心地、走行安定性が良くなった。ブレーキがホイールから離れているので、泥や水が入りにくい」
デュアルラジエーターシステム
「デュアルラジェータ方式のスバル1000には、一般的に採用されている、冷却ファンがありませんでした。その構造はメインとサブの二つのラジェーターと、リザーバータンク、サブラジェーター用の小型電動ファンから成り立っている密封加圧式の冷却システムで、状態に応じて三段階の効率的な冷却を行うことができました。また、この方式が国産車に採用されたのはスバル1000が最初でした」
いずれも世界水準を超えた技術だった。そして、ユーザーがもっとも驚いたのは居住性、つまり車内の広さである。
FR車の場合、フロントのエンジンが作った駆動力をリアにつなげるために、車の中央にプロペラシャフトを通す突起ができる。
現在の車はほぼFF車だから、プロペラシャフトのある風景を忘れた人が多いかもしれないが、リアシートに3人が乗る場合、中央の人間は足を置くスペースがなくなるのである。
それを解決したのがスバル1000で、FF車がその後の大衆車の標準となるのは、この車が出たからだろう。