「私が起業支援を始めた08年頃は退職後の60代の相談者が多かったのですが、現在は50代が中心で40代後半の方もいます。当社の事業の追い風となったのが13年に施行された改正高年齢者雇用安定法です。希望者全員を65歳まで雇うことを企業に義務づけましたが、『早めに第二の生き方を考えたい』と思う人が増えたのです」
片桐さんは新卒で花王に入社後、大和証券SMBCに転職し、27歳の若さで起業した。大企業で培った実務経験に加え、行政書士とファイナンシャルプランナーの資格も持ち、「事業計画書作成」といった実践的なアドバイスも行う。現在の売上高は約7億円。『「シニア起業」で成功する人・しない人』などの著書もある。
「シニアの方はカタイ事業を始める人が多く、『ゆる起業』も目立ちます。早期に事業を拡大するのではなく、やりがいを持って楽しめる事業追求型です。総じて、成功するタイプは軌道修正が柔軟な人です。たとえば大手企業の元研究者は、当初『高齢者向けの移動支援サービス』を手がけたが売り上げが伸びません。そこで『中高生向けのプログラミング教室の運営』に切り替え、売り上げも拡大しました。20年度からプログラミング教育が小学校で必修化されるというタイミングもあり、この事業のほうが本人の持ち味も生かせたようです」(片桐さん)
まずは全員「さんづけ」で若手にも接する
特に中高年男性は、現職・元職に関係なく「社名や肩書」を引きずる人が多い。自分の立ち位置、人生のステージの変化を認めたくないのだろう。以前よりは減ったが、「アイツは年下(元部下)だから」とお互いが中年以降になっても、先輩風を吹かせるタイプがいる。この姿勢では、第二の人生やセカンドキャリアの充実はむずかしい。
大切なのは「イコールパートナーシップ」の精神だろう。具体的には、まずは全員「さんづけ」で若手にも接すること。筆者はプレジデント誌13年の新年号で「40歳を過ぎたら“後輩モテ”を心がけましょう」と提案した。手前味噌で恐縮だが、重要性は強まっていると思う。
【心得】先生然とするのではなく「横から目線」で