社内不倫した社員の解雇を争った判例

「まずは口頭注意が妥当です。それでも関係が続くなら、配置転換で片方の社員を異動させてもいい。業務上の必要性があれば、人事異動に本人の合意は原則として必要ありません。トラブルになっていない段階で取れる対策はこの程度ですが、警告の効果は十分にある」(同)

あとは業務への影響の度合いを見て対処していくことになるが、前述のように不倫を理由にした懲戒解雇は容易ではない。

「懲戒にも段階があり、解雇の前に、譴責(始末書)、減給、出勤停止、降格といった処分が可能です。たしかにいきなりの解雇は困難ですが、段階的に処分を科せば解雇も認められやすい。もっとも、解雇は最終的な手段。何かトラブルが生じたときは、軽いレベルの懲戒処分にしたうえで退職を説得することが現実的です。どちらにしても不倫でトラブルを起こせば会社に居づらくなるもの。私の知るかぎりでは、9割以上の人が自分から退職しています」(同)

当事者は火遊びのつもりでも、問題を起こせば、「プライベートだから」では済まなくなる。不倫トラブルは別れ際に起こりやすいことを考えれば、最初から大人しくしておいたほうが身のためだ。

(ライヴ・アート=図版作成)