父も「ミッションノートのために毎日2時間を費やす

桜蔭合格のために立てた作戦は「全部やる」。試験本番では何が出題されるかはわからない。だからこそ、塾から出された課題はすべてやりきった。ひとつも抜けや漏れを作らないように、とにかく復習には徹底的に力を入れた。

そのために父親が3年間作り続けたのが「ミッションノート」だ。日ごとにやるべき課題を算国理社に分けて記入したノートで、Tさんが塾から帰ってきたら、父親がその日の学習内容を聞き、その復習を確認テストの日までに終わるように日割りして記入する。先々の模試の予定や塾の宿題なども含めた調整が必要になるので、ミッションノート作りは毎回2時間近くかかったと言う。

Tさんは父親がミッションノートに書いた課題をやりきるために、平日でも塾のない日は5時間、塾のある日も2時間は勉強した。時には課題が終わらず深夜まで勉強する日も。もちろん親も勉強に付き合うため、親子ともに寝不足だ。

とくに大変だったのは、もっとも多くの学習範囲を学ぶ5年生だった。母親は「勉強が終わって子供を寝せたあとに丸つけをし、いざ親が寝るのは深夜2~3時です。朝は6時に起きるので、睡眠時間3~4時間という日々が続いたこともありました」と振り返る。

そんなハードな日々を乗り切れたのは、定期的な模試などで手応えを感じられたからだ。しっかりと勉強をすれば成績は伸びた。だから「私たちのやっていることに間違いはない」と親子で確信できたと言う。

塾の対応が変わる圧倒的な努力とは?

Tさんの通っていた塾では、小5のうちにおおよその受験範囲を学び終わり、6年生になってからは演習に重点を置く。それに合わせて新しいことを学ぶ5年生までは、家庭学習でもじっくりと問題に取り組み、理解を深めることを重視してきたが、6年生からは多くの問題をこなすやり方にシフトした。

その上で、模試などで間違えた箇所をおさらいする「テスト直し」の時間を強化した。基本はテストを受けたその日のうちに見直し、「なぜ間違ったのか?」という分析に力を入れた。計算間違いや漢字間違いといったケアレスミスなのか、そもそも知識や解法が身についていないのか——。それを明らかにしなければテスト直しの意味はないと、両親は繰り返しTさんに伝えた。

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テスト直しも子供に任せきりにするのではなく、親がそばで見守りながら本当に知識や解法が定着できたのかをチェックした。まだ理解があやふやだと感じたら、算数の場合は1週間後、理科や社会の知識問題ならば1カ月後に再チャレンジさせた。

そうやって徹底的に努力を続けていると、塾の対応も変わってきたと両親は言う。

「塾から与えられた課題でやらなかったものはひとつもありません。そこまでやりきって、その上でわからない部分を質問に行かせると、先生方も感心して、それよりレベルアップした部分まで教えてくれたりするんです」