日本で新しい金融手法であったリース業を祖業として、融資、投資、生命保険、銀行、資産運用、自動車関連、不動産、環境エネルギー、コンセッション(公共施設などの運営権)事業などへと、多角的に事業領域を拡大してきたオリックス。同社の創業メンバーの一人で、2014年まで30年を超えてグループCEO(最高経営責任者)を務めたのが、ミスター・オリックスともいうべき宮内義彦氏だ。その語り口は静かだが、時に厳しく、企業社会と経営に対する洞察に満ちている。これからの企業経営を担う人材に向けて、経営に関する持論や自らの経験を縦横に語ってもらった。(第2回/全3回)
オリックスの不動産事業は、シティホテル・リゾートホテルから温泉旅館まで多様なニーズに対応したホテル事業(左上)、内陸型大規模水族館の運営(右上)、オフィス・商業施設・物流施設などの企画開発(左下)、宿泊型研修施設(右下)など、多岐にわたる。

やりようはいくらでもある

——少子高齢化という未曽有の問題に直面し、日本の成長はもう望めないという悲観的意見がメディアをにぎわせています。宮内さんはこうした論調についてどうお考えですか。

【宮内】そういう環境であってもやりようはいくらでもあると思います。むしろ、日本はチャンスの山だと思っています。

なぜなら、日本は世界一の貯蓄大国であり、資金は山のようにあるわけですから、世界を相手に、それを投じるだけの事業を起こしていけばいいのです。

といっても、日本中の企業がどれもこれも日本から世界に出て行くべきだというわけではありません。

たとえば、ひなびた田舎の温泉宿があるとしましょう。人気観光地に押され、お客さんが減ってきて困っているというなら、海外の旅行会社と提携し、インバウンドの外国人客を開拓してみたらどうでしょう。農業も、たとえば、アジアの富裕層をターゲットにした高質な野菜や果物を栽培できれば、これまでとはまったく異なる展開が期待できます。

——そう考えると、いくらでもチャンスはあるわけですね。

【宮内】もちろんです。日本には製造業神話があり、製品輸出が不利になるから円高が少しでも進むと、頭を抱えてしまう人が多い。しかし実際には、日本のGDPにおける製造業が占める割合は23%ほどでしかありません。残りの大部分、70%は第3次産業、主にサービス業なんです。また、同じGDPにおける輸出の比率はたった13%です。日本は輸出大国であり、加工貿易で食べていると言われますが、現実はそうではないのです。

面白いことに、GDPに占める輸入の割合も13%程度でほぼ均衡しているんです。つまりは、円高になったら輸出には不利になるけれども輸入には有利になる、逆に円安になったら輸出に有利になるけれども輸入には不利になる。その輸出入の割合がほぼ同じだから、円高も円安も、日本全体にとっての影響はイーブンということになります。

日本のお金の価値が高いほうがよい、ということでいえば、私は円安よりも円高のほうが望ましいことだと思います。それなのに、円高になると、メディアが決まって騒ぎ出すのには首を傾げたくなります。先入観にとらわれず事実を客観的に把握し、正しいマクロ観を身に付ける必要があるのです。

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