同業他社を仮想敵にしないほうがいい
——企業の経営環境がますます複雑化する中で、経営者の役割の大切さがより一層強まっています。経営者はどんな意識で仕事に向かうべきでしょうか。
【宮内】私自身は「会社を大きくしたい」というよりも「会社をよくしたい」という思いで、日々の経営に携わってきました。今日のオリックスより明日のオリックスをよい会社にしたい、そうならなければいけないと。
その場合のよい会社とは何か。会社である限り、財務内容が優れていなければならないのは当たり前ですが、それだけでは会社の善し悪しはわかりません。やはり、社会から必要とされるサービスや製品を提供できているか、給料や待遇面だけではなく、社員一人ひとりにとって働きがいのある組織になっているか、という点も非常に重要です。
そのためには、売上高や利益という数字に限らず、技術力やネットワークの広がり、経営者の人柄や社員のモチベーション、社内風土など、さまざまな視点から会社を見てみることが重要です。株主、顧客、取引先、地域社会、何よりそこで働く社員にとっていい会社にしなければ意味がないということです。
戒めなければいけないのは、会社を成長させようと思うあまり、同業他社を仮想敵とすることです。切磋琢磨することはいいのですが、「A社に負けるな」と強く意識したり、業界シェアを高めることが自社にとっての最大の目標だと思うのはやめたほうがいい。他社をベンチマークにしすぎると、視野が狭くなり面白い会社が作れなくなるからです。
オリックスを設立してしばらくたつと、同業のリース会社がたくさんできました。最初は「負けてたまるか」という気持ちがあったことは確かですが、成長のために、新規事業を次々と手掛けていくうちに、同業者をライバル視しない気持ちが芽生えてきました。仮にリース業で後塵を拝することがあっても、うちは社会が必要とする事業で成長しているんだという自負を持てるようになってきたのです。そうやって「オリックスはオリックスの動きをする」ようになりました。
企業活動とは、「新しいことを世の中に問う」という働きを担っているものです。いい会社に進化するには、他社を気にするより、このアイデアが面白い、このサービスが役に立つ、といった顧客の利益に目を向けたベンチマークを設定することです。社会に価値あるものを提供するためにはどうしたらいいか、真の目的を常に意識しておくことが大切です。