働けない子を「自宅から出す」ような方法を模索すべき

そこで私は、できるだけ働けない子どもをできるだけ自宅から出すように方法を提案しています。経済的には自立ができないので、援助をしなければならないのですが、自宅に居座り続けられないようにするためです。

一人暮らしであれば、中古のワンルームマンションで十分です。自宅を自由に使える状態にしておき、ひきこもりではない子どもが相続します。そうすれば、ひきこもりの子にはワンルームマンションの一部屋といくらかの預貯金を遺してあげることができます。自宅を相続した兄弟姉妹は、自宅に住むのであれ、売却するのであれ、家族の状況に合わせて利用ができます。いずれにしろ、広い家で一人暮らしをする非効率さは避けられます。

ワンルームマンション+預貯金⇒ひきこもりの子
自宅⇒ひきこもりでない子

自宅の評価額と預貯金額にもよりますが、兄弟姉妹でおおむね公平に相続をして、さらにひきこもりの子が生活費を確保できます。

ただ、このやり方は生活費が二重にかかり、支出が多くなるのが難点です。両親とひきこもりの子どもが同居で生活するよりも、別居で仕送りをするほうが、支出は増えます。その結果、十分な預貯金を遺せない場合もあり、シミュレーションでの確認が必要です。

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長女から意外な提案「将来、兄と私たち家族が同居すれば」

今回のケースで実際にシミュレーションをしてみると、なんとか長男の平均寿命ぐらいまでは貯蓄(1600万円)が枯渇せずにすみそうです。しかし、それほど余裕はなく、場合によっては資金不足となる可能性も否定できません。

私は、両親と長女にアドバイスしました。

「二重生活による支出の増加を少なくするためにも、ご長男の別居はできるだけ遅いほうが良いでしょう。ただし年齢が高くなるほど、転居をするのがおっくうになるものです。そのままご自宅に居続けると、ご自宅での一人暮らしになってしまいますので、タイミングが難しいところです」

すると、長女から思いもかけない提案がありました。

「将来、兄と私たち家族が同居するのはどうでしょうか?」