「漁船拿捕は北朝鮮の態度硬化につながる」と安倍政権
かつて北朝鮮の漁船はロシアのEEZ(排他的経済水域)内で密漁していた。
今年9月、ロシア連邦保安局は日本海のロシアEEZ内で密漁していた北朝鮮のイカ釣り漁船の乗組員の身柄を数多く拘束した。
北朝鮮は「ロシアは危ない」と悟り、対応の緩い日本のEEZ内で密漁するようになったのだろう。北朝鮮漁船が大和堆に頻繁に出没する原因は、やはり日本の対応のまずさにある。
安倍晋三首相は10月7日の衆院本会議で「毅然と対応していく」と述べた。だが北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は安倍首相の足元を見ている。
いま日朝関係は微妙な状況だ。このため安倍政権内には「仮に北朝鮮の漁船を拿捕すれば、北朝鮮の態度が硬化しかねない」という見方が出ている。しかも安倍首相は金正恩氏に対し、無条件での首脳会談を強く望んでいる。日本は北朝鮮に毅然とした態度を示し難くなっているのではないか。
沙鴎一歩は、北朝鮮の違法操業は今後も増えるだろうとみている。
2年前の経済制裁で水産業奨励がさらに強化
大和堆で北朝鮮の漁船が増加しているのは、国連の経済制裁が強まる中、金正恩政権が外貨獲得の手段として漁業を奨励しているからである。
報道によれば、金正恩氏は水産業の施設を何度も視察し、水産業を奨励している。直截的には肉類が少ない北朝鮮にとって水産資源は貴重なタンパク源だからだが、2年前の経済制裁で水産物が入ってこなくなると、水産業奨励はさらに強化された。北朝鮮の政府紙「民主朝鮮」によると、北朝鮮の副首相兼国家計画委員長は政府大会で漁業の奨励策を宣言している。
繰り返すが、金正恩氏は日本の大和堆でとれた海産物を友好関係にある中国に密輸して外貨を稼ぎ出そうとしているのだ。