問題は「経済制裁」ではなく、核・ミサイル開発にある

国際社会が制裁を続けるから北朝鮮の経済が立ち行かなくなり、その結果、漁民が小型船を操って大波で沈没の危険がある遠い日本海にまで操業に出ている。弱者の漁民たちがかわいそうだ。こうした見方もあるようだが、これでは本末転倒である。

問題は経済制裁ではない。国際世論を無視し、国として国民の生活の向上を考えず、巨額な費用を投じて核・ミサイル開発を続ける金正恩政権こそ、問題なのである。

軍事に割く国家予算があるなら、それを餓死寸前の国民のために使うべきだ。

なぜ金正恩氏は軍事力を求めるのか。核兵器によって欧米を抑え込み、その勢いで経済力を伸ばそうと考えているのだろう。国が経済的に潤えば、国民も付き従うとみているのだ。独裁主義国家のトップが考えそうなことである。

国民の骨までしゃぶり尽くす金正恩政権のやり方

報道によれば、密漁は北朝鮮軍が運営している。北朝鮮の漁業は富裕層が一般の市民に募集し、中国製の大型の鋼鉄船で10~20隻の船団を組んで密漁に出ることが多い。漁に出るには軍の許可が必要で、しかも漁獲の一定量を軍に納めなければならない。

また金正恩政権は北朝鮮の沿岸海域での漁業権を一部、中国に売却している。その結果、中国の漁業者が過剰な操業を続け、北朝鮮海域の水産資源に大きなダメージを与えた。

国民の骨までしゃぶり尽くすのが、金正恩政権のやり方である。

10月9日付産経新聞の社説(主張)は「漁船の乗組員約60人は海に投げ出されたが、取締船の救命いかだで全員救助された」と書き、「取締船が全員の救助救命を果たしたことは立派である。海難救助は人道上当然だ」と指摘する。

このまま日本側の救難救助を褒めたたえていくのかと思ったが、違った。