フルタイム労働者でも長時間労働はピーク時の半分程度
近年、パートタイマーなどの非正規雇用が著しく増加しており、長時間労働の比率が低下したのは母数に含まれる短時間労働者が増えているからにすぎず、フルタイム労働者の長時間労働は増えているのではないか、といった疑問も生じる可能性がある。そこで、図表2では労働力調査によってフルタイム労働者に占める長時間労働の推移を確かめた。
長時間労働は、図表1より低下傾向がなだらかであるが、2017年に10.8%とバブル経済さなかの1988年の19.9%の約半分となっており、最近は、毎年最低を更新している。長時間労働はやはり傾向的に減少してきているといえよう。
以上の統計的観察から、電通の過労死事件から長時間労働による弊害が社会問題としてクローズアップされているが、それは長時間労働が「増えているから」生じているのではなく、「減っているにもかかわらず」生じていると考えるべきだろう。
これだけ過労死問題が新聞紙面に多く登場しているのに、長時間労働が増えているという推移グラフが付されている場合が見当たらないのは、むしろ、そうした事実がないことの証しであると見たほうがよいわけである。
長時間労働が減っても仕事のストレスが目立つのはなぜか
このように長時間労働は減ってきているが、それでは仕事のストレスも少なくなってきているのだろうか。この点をISSP国際調査の結果から調べてみよう。
ISSP調査は何年かおきに同一テーマで調査を行っている。仕事をテーマにした最新の公表分は2015年に行われた「仕事と生活についての国際比較調査」(英語表記Work Orientation)であり、過去には1997年、2005年にも日本が参加して調査が行われている。
この調査では、毎回、仕事のストレスや労働時間を調べている。時系列変化を追う前に、最新時点での両者の関係を調べておこう。2015年調査に参加した37ヵ国の長時間労働と仕事のストレスとの相関図を図表3に掲げた。