税率を上げたとたん、経済が腰折れした

19年10月に予定されている消費税率引き上げでは、およそ6兆円の税収増が予想されています。ただ税率引き上げに合わせて軽減税率が導入されるので、その分は減収となり、トータルでは年間でおよそ5兆~6兆円弱の増収となるでしょう。

過去数年の流れから見て、この程度の税収増は、今後2~3年程度景気を安定させられれば、自然増で十分、賄えるはずです。逆に税率引き上げによって景気が落ち込めば、増税しても思ったほど税収が伸びなかったり、かえって税収減となる可能性もあるのです。

当たり前ですが、増税は税収を増やすために行います。何のための消費税率アップなのか、これでは元も子もありません。

日本の輸出は現在、2割が米国、2割が中国ですが、日本にとってのこの2大マーケットはどちらも先行き不透明な状況にあり、内需も力強さに欠けています。そんな景気の先行きが見えない状態で、19年10月に消費税率引き上げを強行すれば、景気を一気に暗転させてしまう契機となる可能性はかなり高いと見られます。にもかかわらず、2~3年程度の財政再建の前倒しを狙って消費増税を実施することは、きわめて危険な賭けであり、かえって財政再建を遠ざけることになりかねません。

ほかでもない14年4月の消費増税を見れば、その懸念がよくわかります。12年末の第2次安倍内閣発足後、13年の実質GDP成長率は前年比で2.0%、14年に入っても1~3月の実質GDP成長率は前期比3.9%(年率換算)と絶好調でした。

ところが14年4月に消費税率を引き上げたとたん、4~6月は前期比マイナス7.2%まで一気に下落。好調だった日本経済は、完全に腰折れしてしまいました。

財務省では「少子高齢化の影響」などと解説しているようですが、少子高齢化は何も14年に始まったことではありません。あくまで消費税率引き上げの影響を認めようとせず、現実から目を背け続ける財務省の姿勢は、理解に苦しみます。

8%→10%のマイナス影響はGDP2%分

この当時の家計の消費支出額税率引き上げを調べてみると、駆け込み需要とその反動を除いた名目支出額には、増税前後で大きな変化がありません(図参照)。これは、家計の実質的な消費が、消費税率の増加分だけ減ったことを意味します。

この事実は、「日本人の日常の購買行動において、税率にかかわらず品目別の支払額が固定されている」ことを示唆します。