競争激化で設備投資に回せるお金が減っている

かつて東京電力は毎年1兆円を超す巨額の設備投資を行ってきた。ピークだった1993年には1兆7000億円にのぼった。国の公共工事に連動する「第二の公共工事」の色彩が強かったが、2017年は6000億円にまで減っている。「総括原価方式」と呼ばれる確実に利益が上がる電気料金を独占的に適用できた時代には、設備投資に振り向けられるだけの十分な収益が確保できていた。それが電力自由化の流れの中で、電力料金の競争が激化し、設備投資に振り向けられる資金が減ってきているわけだ。

もちろん、電力の自由化自体を否定するわけではない。競争によってエネルギー供給サービスの利便性を高め、価格を抑えることは、消費者にとってプラスになる。電電公社からNTTを生んだ通信の自由化が、その後の通信サービスの多様化を生み、巨大ビジネスに成長したことを考えれば、電力・ガスを中心とするエネルギー・ビジネスにも未来を感じる。

だが、東京電力グループに原発事故の責任を負わせる一方で、前向きの設備投資にも資金を投じろというのは無理があるのではないか。事故直後、東電をいったん破綻処理すべきだという意見もあったが、東電への巨額の貸付金を抱え、社債を保有していた大手銀行などの反対で、形上、東電を存続させた。その、無理くりのスキームが、ここへ来て、本気で事業投資できない子会社を生んでいるのではないか。

今回の不手際を「想定外」の事態だから仕方がない、と水に流すのではなく、東電という会社グループの在り方をも再検証する機会とすべきだろう。

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