口利きの“余地”がある入管行政の実態

在留資格の申請をしていたのが人材派遣会社であることから、案件は外国人の就労ビザ取得に関するものだったのであろう。人手不足の深刻化によって、日本で働く外国人は急増中だ。厚生労働省の調べでは、外国人労働者は2018年10月時点で146万人を超え、過去5年間で倍増している。

就労ビザの発給基準も大幅に緩んでいるが、審査する入国管理当局に一律の基準があるわけではない。現場担当者の裁量で、発給の可否や審査期間が左右されることも少なくない。そこに口利きの“余地”が生まれる。

政治家による口利きが、実際に効果を発揮するのかどうかは不明だ。だが、外国人労働者の受け入れ現場を取材していると、政治家の陰が見え隠れすることはよくある。外国人の就労ビザ取得の現場で何が起き、いったいどんな外国人たちがビザを得ているのか――。

外国人労働者の受け入れに着目し、利権にしようと試みる政治家は上野氏に限ったことではない。多くの政治家はもっと巧妙に、合法的なやり方で利権を手にしている。例えば、外国人技能実習制度を通じた実習生の受け入れ事業である。

法務省によれば、外国人実習生の数は18年末には32万8360人に達し、やはり過去5年で2倍以上に増えている。実習制度に関しては、実習生の職場からの失踪をはじめ、数々の問題がメディアで頻繁に報じられる。同制度の根本的な見直しを求める声も多いが、逆に制度は拡大していく一方だ。その背景には、政治の利権が関係していることは間違いない。

実習生を仲介するだけで「毎月3万~5万円」

政府は実習制度の問題に関し、実習生から多額の手数料を取っているような「悪徳ブローカー」の排除が必要だと強調する。だが、政治家自身がブローカーの役割を果たしている実態については、政府、そして大手メディアも全く触れない。

実習生の受け入れは、送り出し国と日本の双方に存在する仲介団体を通さなければならない。日本側では「監理団体」が、中小企業や農家といった受け入れ先への仲介を担う。監理団体は営利目的の仲介が禁じられていて、民間の人材派遣会社などの参入も認められていない。「事業組合」といった、一見公的な看板を掲げる団体しか監理団体にはなれないのだ。

しかし実際には、実習生の仲介はビジネスそのものだ。監理団体は「監理費」として、実習生1人につき月3万~5万円程度を受け入れ先の企業から徴収できる。仲介するだけで継続的に手数料が入るわけだ。その運営には、人材派遣会社や日本語学校などの経営者が関わっていることもよくある。

さらには、落選・引退した政治家の関与も目立つ。実習制度は1990年代初めにつくられたが、当初は「中国人実習生の受け入れは社会党、その他のアジア諸国は自民党」という利権のみ分けもあったほどだ。利権は何も自民党関係者だけが独占しているわけではない。