だからみんなで、ベンチプレスをしませんか?

落語家・立川談慶さん

落語が示してきたのは、アクセル思考とは真逆の思考です。勝ち方より負け方、進み方より逃げ方、立ち向かい方よりかわし方、成功より失敗——、そしてアクセルよりブレーキです。

「とりあえず謝っておけ。小言は頭の上を通り過ぎていく」
「出世なんて災難には遭いたくねえ」
「生涯、せがれで暮らしたい」

こんなブレーキ言葉の宝庫こそが落語なのであります。

そして、挫折や恥が付き物なのが、私が愛する筋トレなのです。筋トレはある意味、挫折がデフォルトです。筋トレを始めたばかりの頃、60キロのベンチプレスが上がらず潰されそうになったことがあります。

立川 談慶『デキる人はゲンを担ぐ』(神宮館)

悲鳴を上げると筋トレマニアの高齢者の方が補助に来てくれて、なんと片手で60キロのバーベルを持ち上げて私を助けてくれました。この挫折と屈辱と感謝が入り混じった複雑な感情はいまでも忘れていません。この日の出来事を、それ以後「今日は疲れたからサボろうかなあ」という気持ちになった時に、思い出すようにしています。まるで防波堤のような形で、自分を引き止める役目になっています。

落語も筋トレも効率とは無縁で、じっくり構えなければその良さはわかりません。最後にオチと筋肥大が訪れる。それが落語と筋トレの醍醐味です。

みなさんもぜひ、ユーチューブで落語を聞きながら、ベンチプレスの自己記録更新に挑んでみませんか? 継続すれば必ずやあなたを大きくしてくれます。身だけでなく、心まで。

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