海外のマック、ケンタッキーは一足先に新商品
一方ヨーロッパでは、一足先にマクドナルドがドイツやスウェーデンなどでヴィーガン・バーガーの販売を開始。アメリカでは、朝食に力を入れる大手コーヒー&ドーナツチェーンのダンキンが、7月にビヨンド・ミートを使ったサンドイッチを発売、続いて8月にはバーガー・キングがインポッシブル・バーガーを使った「インポッシブル・ワッパー」を始めた。
さらに、ケンタッキーフライドチキン(KFC)も代替肉を使ったフライドチキンサンドをイギリスで売り出したばかり。ビヨンド・ミート社と提携した「ビヨンドフライドチキン」を、ジョージア州アトランタの一部店舗で実験販売したことは先月の大きなニュースになった。こうした商品は、すでにヴィーガンを超えてマスをターゲットにしていることは明らかだ。
市場調査会社のミンテルによれば、アメリカ人の6割は肉の消費をもっと減らしたいと考えている。こうした代替肉は、お肉を控えたい、もっと植物性由来の食品を取り入れたライフスタイルに変えたいと思っているアメリカ人、さらにはとにかく新しいトレンドに敏感な若い世代にとって、わくわくする食アイテムとして脚光を浴びているのだ。
代替肉の向こう10年間の成長は、現在の100倍に当たる1400億ドルにまでに達し、食肉市場の10%を占めるようになるという予測もあるほどだ。
この試算を行ったバークレイズ・グループはその最大の理由として、ミレニアル世代とそれに続くZ世代が抱える「環境への懸念」を挙げ、それに続き「動物虐待への反対」と「健康」も指摘している。
動物性なのに「ヴィーガンもOK」
ところがここにもう一つ、代替肉に加えて新たなゲームチェンジャーになるお肉が市場に参入しようとしている。動物の幹細胞から培養して生成された「ラボミート」だ。
この肉はクリーン・ミートとも呼ばれ、開発しているスタートアップは全米で10社を超える。2021年ごろにはもう市場に登場するとみられている。
これが実現すれば、畜産がもたらす倫理、環境問題はもちろん、世界の食糧危機を一気に解消する手段として世界の投資家からすでに熱い視線を浴びている。中でも食肉大手のタイソン・フード、畜産大手のカーギルなどが投資していることで、将来が期待される一方、技術的な問題もまだ大きいとされている。
ところで、ラボミートは厳密にいうと動物性タンパク質に当たるが、ヴィーガンの人は食べていいのだろうか?
ヴィーガン食品の見本市「ベジタリアン・フード・フェスティバル」のオーガナイザー、サラ・フィオリさん(ヴィーガン歴20年)によれば「ヴィーガンのもともとの理念は動物を殺して食べないという解釈であれば、ヴィーガンでもラボミートは食べていいことになります」
なるほど、ラボミートの出現で、ヴィーガンというコンセプト自体も変貌していきそうな気配だ。