図表14の左は動画配信サービス3社の価値要素を分析したものです。NPSが突出して高いNetflixはどの要素も高いレベルで満たしているのですが、より上位のたとえば「自己実現」といった価値要素については飛び抜けて高いレベルになっています。一方で、「簡素化」のような機能的要素についても他を引き離しています。これは、イントロを飛ばしたいときにすぐ飛ばせるなど、細かいところまで行き届いているということです。右側は家計簿アプリの場合ですが、一番手であるマネーフォワードは「簡素化」「時間の節約」などの使いやすさ、つまり機能的要素が高く評価されていることがわかります。
このように価値要素について、何がいちばんお客様に響いているのかということを聞いていくと、推奨者を増やすための具体的なアクションにつなげやすくなります。
そもそも顧客調査の回答率が低すぎるという問題
NPSをうまく活用できない企業の悩みとして次に多いのが「顧客の声が十分な数集まらずに、有意な分析に繋がらない。解約の予兆を掴みたくても、批判の回答後だと後手に回ってしまう」というものです
サブスクリプションビジネスにおいては特に解約の予兆というものが大事ですが、ユーザーが批判者になってしまうと、すぐ解約されてしまうので打つ手がありません。そもそも、顧客調査に回答される方は、全体のごく一部です。回答率が低い業界だと1%あるかないか、高い業界でも10%いくかいかないかです。回答しなかった顧客の声を吸い上げるために弊社で最近新たに導入し始めているものが「推定NPS」です。これは、顧客体験に関する定量データ(コールセンターの入電数や、支払い履歴など)と、定性データ(ツイッターやFBへの投稿内容、アプリに対するレビューなど)のビッグデータを統計的に処理し、どういったものがNPSのプラスにつながっているか、もしくは逆にマイナスにつながっているかを予測するモデルです。
直近の事例では、回答率が10%に満たず有効なアクションに結び付けられずにいた銀行が推定NPSを導入したところ、「このお客様はこういった回答をなさる可能性が非常に高い」といったことが浮かび上がってきたため、有効なアクション案につながり、実際にアクションを行うことが可能になりました。その結果、顧客の解約率が半減し、推奨者に対するキャンペーンの成功率が大きくアップしました。