サブスク乱立時代に生まれた「洋服借り放題」
“サブスク”が百花繚乱だ。サブスクとは、買い切りではなく、定額で一定期間利用できるサブスクリプションサービスのこと。定額制はヘビーユーザーほど割安になり、事業者側も安定的な売り上げが見込めるメリットがある。
音楽配信のスポティファイや動画配信のネットフリックスといったデジタル系サービスをきっかけに注目され始めたが、今年2月にはトヨタが新車を3年間使えるサービス「KINTO」を発表、6月にはキリンがクラフトビールのサブスク「CLUB BTG」を始めるなど、いまやリアルワールドにもサブスク化の波が押し寄せている。
アパレル業界も無縁ではない。「アース ミュージック&エコロジー」といった人気ブランドを抱えるストライプインターナショナルは、2015年9月に、ファッションのサブスクサービス「メチャカリ」を開始。スタート以来、サービスは順調に拡大し、4年目の現在、会員数1万3000人の規模に成長している。
なぜファッションのサブスクを始めたのか。メチャカリ事業を立ち上げた澤田昌紀・メチャカリ部部長は、自社の事情を明かしてくれた。
「わが社は13年にグループ連結で売り上げ1000億円を超えました。ただ、アパレル市場そのものは縮小傾向にあり、既存事業だけでは成長に限界があります。1兆円企業を目指すには、新規事業が必要でした」
店舗事業との“利益の食い合い”も予想されたが
新規事業のヒントをくれたのは、社長の石川康晴氏だった。
「トヨタは作って売るだけでなく、リースや中古車の買い取りもしている。アパレルも製造販売にとどまらず、川上から川下までもっと広く手掛けられるはずだ、とアドバイスをくれまして。売る以外のビジネスを検討した結果、ファッションのサブスクに行き着きました」
実はメチャカリが事業化される7カ月前に、他社が洋服の定額レンタルサービスを始めている。ただ、自社でデザインし、製造するアパレルメーカーのサブスクはメチャカリが日本初。澤田氏は、メーカーである強みをこう強調する。
「自社で作るので当然、仕入れコストは抑えられる。また、洋服ははやり廃りのあるナマモノ。新品新作をいち早く提供できることも強みです」
ただし、メーカーが行うサブスクにはデメリットも存在する。既存事業とのカニバリゼーションだ。安く借りられるなら、顧客は自社製品を買わなくなるのではないか。そんな不安から、社内で抵抗が起きるケースも珍しくない。
「カニバリは当然、懸念しました。そこでわが社の会員基盤を使って100人を対象に3カ月、テストマーケティングを実施したのです。その結果、多くのユーザーはメチャカリを使いつつ洋服も買っていました。このデータがあったので社内も説得できました」