スコアからシステムへ

最後になりますが、NPSはスコアを取るだけでなく、それを基にして顧客ロイヤルティを継続的に改善・向上させるマネジメントシステムを構築しなくてはなりません。そこで陥りがちなリスクがいくつかあります。

●経営陣が一枚岩になっておらず、またコミットメントが足りない
●行動変化を起こす理由について十分に納得させられていない
●スコアに拘り過ぎ、肝心の行動を変えるところが疎か
●学習や行動を促進するためのフィードバック・ループがきちんと作りこまれていない
●拙速に報奨や評価に結び付けてしまう
●質、コスト、スピードが両立していない非現実的な導入プラン
●機能横断的な協働を妨げるサイロ化された活動推進

上記のリスクを避けるためにも、どういったことが必要になるのかまず経営トップからのぶれないコミットメントを得ることです。経営トップから全社にどのようなコミュニケーションが取れているべきかが基本になります。ここができるとNPSという指標の信頼性が組織全体で共有されます。そのうえで、現場対応における学習と改善のサイクルと、組織内でそれを支える学習と改善のサイクルを同時に回していくことが求められます。

成功の鍵
エピソードを基準にサービスを評価
フレッド・ライクヘルド 、ロブ・マーキー (著)、 森光 威文、大越 一樹、渡部 典子(翻訳)『ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤルティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する』(プレジデント社)

今回とりあげたサブスクリプションビジネスにおいては、顧客体験をエピソードとして見ることがきわめて重要になります。たとえばこれまでコールセンターや店舗などのタッチポイントでそれぞれにNPSを取り、それぞれが学習と改善のサイクルを回したとしても、ユーザーは個別のタッチポイントではなく、エピソードを基準にサービスを評価しています。ですから、図表17で縦軸にあたる組織・機能軸ではなく、機能横断的なエピソード軸でアクションを取れるような体制を作っていくことが不可欠です。

従来型ビジネスと比べてもサブスクリプションサービスにおけるNPSは、経済性とより強く相関することがわかりました。顧客の乗り換えコストが低いため、顧客満足度が低いとすぐに解約されてしまうため、批判者には早期に対処する必要があります。一方で、長く続けてくれる推奨者の口コミ等による経済効果は非常に大きいため、推奨者をどうやって継続的に生み、活性化するかの設計も重要になってきます。顧客エピソードを軸に、機能横断的改善、また変革を図る体制というのをいかに作り上げるかということがサブスクリプションビジネス成功の鍵を握るでしょう。