「新憲法の2020年施行」は風然の灯
安倍氏が改憲に意欲をみなぎらせていることは、いまさら説明する必要はないだろう。党総裁任期はあと2年。その間に何としても改憲を実現したい。
しかし、現実には改憲への動きは遅々として進んでいない。
その理由として「安倍氏が前面に出過ぎて野党を刺激した」という指摘がある。安倍氏の強い希望で自民党は「9条に自衛隊明記」などの4項目の改憲案をまとめた。また党の憲法改正推進本部長には安倍氏の側近・下村博文氏、野党との交渉の窓口である衆院憲法審査会の与党筆頭幹事には安倍氏の盟友で保守派の論客・新藤義孝氏を起用した。いかにも安倍氏主導で強引に改憲を進めようという構えだった。
しかしその結果、野党は警戒し、結局、憲法審査会は衆参ともにほとんど審議されず、安倍氏が掲げ続けてきた「新憲法の2020年施行」は風然の灯となってしまった。
あえて「安倍カラー」の強くない人物をトップに
さらに7月の参院選では、自民党、公明党などの「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2の議席を割り込んでしまった。改憲戦略の見直しが迫られる時だ。
安倍氏は熟慮の結果、新布陣では、あえて「安倍カラー」の強くない人物を憲法問題のトップに据えてみようと考えた。急がば回れ。寓話「北風と太陽」をイメージしてもらうと分かりやすい。
岸田氏は、その「太陽」役を担う。岸田氏が率いる岸田派は池田勇人元首相率いる名門・宏池会の流れをくむ。保守本流、自民党ハト派を標ぼうしていて岸田氏も党内にあってはハト派、リベラル派と位置づけられている。